タイリクモモンガ

タイリクモモンガ
タイリクモモンガ
タイリクモモンガ
保全状況評価
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: ネズミ目(齧歯目) Rodentia
: リス科 Sciuridae
亜科 : リス亜科 Sciurinae
: モモンガ族 Pteromyini
: モモンガ属 Pteromys
: タイリクモモンガ Pteromys volans (Linnaeus, 1758) [1]
亜種 : P. volans volans(基亜種)
学名
Pteromys volans
和名
タイリクモモンガ
英名
Russian flying squirrel[1][5]
Siberian Flying Squirrel[1][5]
Eurasian small flying squirrel[5]
タイリクモモンガの生息図

タイリクモモンガ(大陸小鼯鼠、Pteromys volans)は、ネズミ目(齧歯目)リス科リス亜科モモンガ族モモンガ属に分類されるモモンガの一種[1]

の学名Pteromys volansの意味は「飛ぶ翼のある鼠」で、Pteromysギリシャ語で「翼のあるネズミ」、volansラテン語で「飛ぶ」をそれぞれ意味する[6]

2006年の夜にフィンランドクラウカラで撮影されたタイリクモモンガ。

分布・分類

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ユーラシア大陸北部に幅広く分布する[1]。その生息範囲はフィンランド北部・エストニアラトビアからロシア連邦サハリン州を含む)・モンゴル中華人民共和国(中国)の西北部および東北部朝鮮半島と広範囲にわたる[1]。なおカムチャツカ半島には分布していない[7]

また今泉吉典(1949)は北海道産の亜種(エゾモモンガ)をP. v. orii (Kuroda) に分類したほか本州九州に生息しているモモンガ(後のニホンモモンガ)を別亜種P. v. amygdali (Thomas) に分類したが、ニホンモモンガはエゾモモンガと陰茎骨の形態が全く異なっていることが判明したため後に別種として記載された[4]

形態・生態

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体長は15 - 20センチメートル・尾長10 - 12センチメートル程度[11]。北海道に生息する亜種エゾモモンガの場合、頭胴長は15 - 16センチメートルで尾長は10 - 12センチメートル[12]・体重は100 - 120グラム[12]。背面は夏毛で淡い茶褐色・冬毛は淡い灰褐色で、腹面は白色であるが一部個体差がある[12]。顔に対する目の占める割合が大きく、滑空するための飛膜を持つ[5]。乳頭数は4対である[12][13]

平野部 - 亜高山帯にかけて分布し[7]、生息標高は海抜0メートル - 2,500メートルと広範囲にわたる[9]。夜行性で、日没直後 - 日の出前後にわたり活動する[5]。樹上生活を行い、飛膜を用いて滑空し花・葉・枝・種子などを食べる[13]。日中は樹洞の巣穴・巣箱で休息する[12]

年に1回または2回繁殖して春 - 夏に2 - 6頭を出産する[5]

人間との関係

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造林地では若芽を食害するほか、小鳥繁殖用の巣箱に入ることで間接的ながら邪魔をする[10]。一方で本種の毛皮はかなり薄く持久に耐えないが、質が柔らかいため寒地では耳掛けなどに用いる[10]

保全状況

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リトアニアでは絶滅したと考えられ、ベラルーシでも絶滅した可能性がある[1]

フィンランド・エストニア・韓国でも森林分断化の悪影響を受け減少傾向にあり[14]、韓国に生息するタイリクモモンガの亜種チョウセンモモンガ Pteromys volans aluco (Thomas) は1982年11月16日付で韓国の天然記念物(第328号)に指定されている[15][16]。日本(北海道)に生息するエゾモモンガは普通種だが[1]、森林の孤立・分断化による個体数減少が懸念されている[17]

外来種として

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なおエゾモモンガを除くタイリクモモンガ種はかつてフクロモモンガ有袋類)・アメリカモモンガ(モモンガ属)とともに日本国内へペット(愛玩動物)として輸入されていたが[5]、個人による飼育下での繁殖は難しい[11]。またタイリクモモンガ種は野生化した個体がエゾモモンガと亜種間交雑したり[注 1][11]、エゾモモンガやニホンモモンガ(ホンドモモンガ、本州四国九州に生息)と競合したりすることが懸念されたため[5]2005年(平成17年)12月14日から特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律により「特定外来生物」第二次指定種に追加指定され、翌2006年(平成18年)2月1日以降は輸入・飼育などが原則として禁止されている[注 2][21]

脚注

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注釈

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  1. ^ 自然界での亜種間交雑については確認されていないが、仮に逸脱すれば再捕獲することは非常に困難となる[18]。日本国内における定着状況は不明だが、1999年に高知県高知市内で1頭が捕獲された記録がある[19]
  2. ^ 動物写真家・鈴木欣司は「タイリクモモンガは短命である上、仮に街中で飼育されていた個体が逸走しても天敵が多くまず生き延びられない。大切にモモンガを愛玩している飼育者がわざわざニホンモモンガ・エゾモモンガの生息地まで出向いて捨てることは考えられない」と述べ、特定外来生物指定に否定的な見解を示している[20]

出典

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  1. ^ a b c d e f g h i IUCN 2016.
  2. ^ a b c d e f g h "Pteromys volans" (英語). Integrated Taxonomic Information System. 2020年1月24日閲覧
  3. ^ a b 元炳旿 1968, p. 40.
  4. ^ a b c d e 門崎 1974, p. 249.
  5. ^ a b c d e f g h 国立科学研究所.
  6. ^ 門崎 2009, p. 345.
  7. ^ a b 門崎 2009, p. 347.
  8. ^ CSIRO 2012, p. 185.
  9. ^ a b c CSIRO 2012, p. 186.
  10. ^ a b c 岡田 1988, p. 679.
  11. ^ a b c 特定外来生物の解説:タイリクモモンガ [外来生物法]”. 環境省. 2020年1月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年1月28日閲覧。
  12. ^ a b c d e 柳川 2002, p. 84.
  13. ^ a b 京都府.
  14. ^ 嶌本樹、古川竜司、鈴木圭、柳川久「糞を用いたタイリクモモンガ Pteromys volans の生息確認方法」『哺乳類科学』第54巻第2号、日本哺乳類学会、2014年、201-206頁、doi:10.11238/mammalianscience.54.2012019年10月14日閲覧 
  15. ^ 멸종위기종 - 하늘다람쥐” (朝鮮語). 大韓民国(韓国)環境部 (2007年1月2日). 2019年10月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年10月14日閲覧。
  16. ^ [천연기념물 이야기_하늘다람쥐, 반달가슴곰]” (朝鮮語). 大韓民国(韓国)環境部 (2012年7月9日). 2019年10月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年10月14日閲覧。
  17. ^ 柳川 2002, p. 87.
  18. ^ タイリクモモンガ”. 北海道ブルーリスト. 北海道. 2019年9月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年9月15日閲覧。
  19. ^ タイリクモモンガ”. 四国自然史科学研究センター. 2019年9月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年9月15日閲覧。
  20. ^ 中日新聞』2006年12月19日夕刊科学面5頁「身近なエイリアン 鈴木欣司 守ってあげたい タイリクモモンガ」
  21. ^ 特定外来生物一覧” (PDF). 環境省. 2019年9月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年9月15日閲覧。

参考文献

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関連項目

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