タニス・リー
タニス・リー(Tanith Lee、1947年9月19日 - 2015年5月24日[1])はイギリス生まれのファンタジー作家。
「現代のシェヘラザード姫」、「ダーク・ファンタジーの女王」と呼ばれた。
9歳の頃より創作を始め、グラマースクールで美術を学び、24歳でデビュー。初期は児童向けにジュブナイルを書いていたが、神秘的かつ耽美な作風は『平たい地球』シリーズで広く認められるところとなる。第2作の『死の王』でオーガスト・ダーレス賞(現在の英国幻想文学大賞)を受賞している。短篇作品にも定評があり、1983年には『ゴルゴン』、翌84年には『彼女は三(死の女神)』によって、世界幻想文学大賞短篇部門賞を2年連続で受賞している。2013年、世界幻想文学大賞で生涯功労賞を授与される。
ファンタジーにとどまらず、ホラー、SF、エッセイやドラマ脚本など幅広い分野で精力的な活動を行った。アンソロジーなどにも多く寄稿している。
著作数は100冊近いが翻訳されたものは少なく、その大半が絶版になっている。
2015年5月24日、死去。67歳[1]。
著作リスト
[編集]- 『ドラゴン探索号の冒険』 (The Dragon Hoard (1971)、井辻朱美訳、社会思想社、現代教養文庫) 1990/1/31 ISBN 4-390-11320-8
- 『月と太陽の魔道師』(East of Midnight (1977)、汀奈津子訳、ハヤカワ文庫FT42) 1982/7/15
- 『幻魔の虜囚』(Volkhavaar (1977)、浅羽莢子訳、ハヤカワ文庫FT51) 1983/4/30 ISBN 4-15-020051-3
- 『死霊の都』(Shon The Taken (1979)、森下弓子訳、ハヤカワ文庫FT50) 1983/3/31 ISBN 4-15-020050-5
- 『影に歌えば』(Sung in Shadow (1983)、井辻朱美訳、ハヤカワ文庫FT83) 1986/1/31
- 『黄金の魔獣』(Heart-Beast (1992)、木村由利子訳、ハヤカワ文庫FT224) 1996/8/31 ISBN 4-15-020224-9
- 『バイティング・ザ・サン』(Biting the Sun (1999)、環早苗訳、産業編集センター) 2004/2/27 ISBN 4-916199-58-8
- 『鏡の森』(White as Snow (2000)、環早苗訳、産業編集センター) 2004/10/31 ISBN 4-916199-64-2 - 2001年ローカス賞受賞
- 『パイレーティカ - 女海賊アートの冒険』上(Piratica: Being a Daring Tale of Girl's Adventure upon the High Seas (2003)、築地誠子訳、小学館、ルルル文庫) 2007/5/1 ISBN 978-4-09-452007-1
- 『パイレーティカ - 女海賊アートの冒険』下(Piratica: Being a Daring Tale of Girl's Adventure upon the High Seas (2004)、築地誠子訳、小学館、ルルル文庫) 2007/5/1 ISBN 978-4-09-452018-7
- 『薔薇の血潮』上(The Blood of Roses、市田泉訳、創元推理文庫585-02(Fリ-2-01)) 2013/7/1 ISBN 978-4-488-58502-0
- 『薔薇の血潮』下(The Blood of Roses、市田泉訳、創元推理文庫585-03(Fリ-2-02)) 2013/7/1 ISBN 978-4-488-58503-7
闇の城(The Castle of Dark)
[編集]- 『闇の城』(The Castle of Dark (1978)、こだまともこ訳、ハヤカワ文庫FT53) 1983/6/30 ISBN 4-15-020053-X
- 『白馬の王子』(Prince on a White Horse (1982)、井辻朱美訳、ハヤカワ文庫FT48) 1983/1/31 ISBN 4-15-020048-3
銀色の恋人(The Silver Metal Lover)
[編集]- 『銀色の恋人』(The Silver Metal Lover (1981)、井辻朱美訳、ハヤカワ文庫SF725) 1987/7/31 ISBN 4-15-010725-4、のち新版(ハヤカワ文庫SF1606) 2007/ 4/15 ISBN 978-4-15-011606-4
- 『銀色の愛ふたたび』(Metallic Love (2005)、井辻朱美訳、ハヤカワ文庫SF1611) 2007/5/25 ISBN 978-4-15-011611-8
平たい地球(Flat Earth)
[編集]表紙のイラストは萩尾望都
- 『闇の公子』(Night's Master (1978)、浅羽莢子訳、ハヤカワ文庫FT45) 1982/10/31 ISBN 4-15-020045-9、のち新版(ハヤカワ文庫FT476) 2008/9/1 ISBN 978-4-15-020476-1
- 『死の王』(Death's Master (1979)、室住信子訳、ハヤカワ文庫FT86) 1986/5/31 ISBN 4-15-020086-6
- 『惑乱の公子』(Delusion's Master (1981)、浅羽莢子訳、ハヤカワ文庫FT89) 1986/7/15 ISBN 4-15-020089-0
- 『熱夢の女王』上(Delirium's Mistress (1986)、浅羽莢子訳、ハヤカワ文庫FT121) 1989/3/31 ISBN 4-15-020121-8
- 『熱夢の女王』下(Delirium's Mistress (1986)、浅羽莢子訳、ハヤカワ文庫FT122) 1989/3/31 ISBN 4-15-020122-6
- 『妖魔の戯れ』(Night's Sorceries (1987)、浅羽莢子訳、ハヤカワ文庫FT140) 1990/7/31 ISBN 4-15-020140-4
- 「夜の娘、昼の望み」
- 「夜の子ら」
- 「放蕩息子」
- 「月のドゥーニヴェ」
- 「薔薇のごとく黒く」
- 「戯れる者」
- 「魔法使いの娘」
パラディスの秘録(The Secret Books of Paradys)
[編集]- 『パラディスの秘録 幻獣の書』(The Book of the Beast (1988)、浅羽莢子訳、角川書店) 1992/5/30 ISBN 4-04-791199-2、のち角川ホラー文庫508-1 1994/4/24 ISBN 4-04-266701-5、のち創元推理文庫585-05(Fリ-02-04) 2015/2/1 ISBN 978-4-488-58505-1
- 『パラディスの秘録 堕ちたる者の書』(The Book of the Damned (1988)、浅羽莢子訳、角川書店) 1992/7/30 ISBN 4-04-791198-4、のち角川ホラー文庫 1994/10/1 ISBN 4-04-266702-3、のち創元推理文庫585-04(Fリ-02-03) 2015/1/1 ISBN 978-4-488-58504-4
- 「紅に染められ」
- 「黄の殺意」
- 「青の帝国」
- 『パラディスの秘録 死せる者の書』(The Book of the Dead、市田泉訳、創元推理文庫585-06(Fリ-02-05)) 2014/8/1 ISBN 978-4-488-58506-8
- 『パラディスの秘録 狂える者の書』(The Book of the Dead、市田泉訳、創元推理文庫585-07(Fリ-02-06)) 2014/9/1 ISBN 978-4-488-58507-5
ウルフ・タワー(Wolf Tower)
[編集]- 『ウルフ・タワーの掟』(Law of the Wolf Tower (1998)、中村浩美訳、産業編集センター) 2005/3/20 ISBN 4-916199-69-3
- 『ライズ星の継ぎ人たち』(Wolf Star Rise (2000)、中村浩美訳、産業編集センター) 2005/3/1 ISBN 4-916199-70-7
- 『二人のクライディス』(Queen of the Wolves(Wolf Queen) (2001)、中村浩美訳、産業編集センター) 2005/5/1 ISBN 4-916199-71-5
- 『翼を広げたプリンセス』(Wolf Wing (2002)、中村浩美訳、産業編集センター) 2005/5/1 ISBN 4-916199-72-3
ヴェヌスの秘録(Secret Books of Venus)
[編集]- 『水底の仮面』(Faces under Water (1998)、柿沼瑛子訳、産業編集センター) 2007/3/1 ISBN 978-4-916199-97-3
- 『炎の聖少女』(Saint Fire (1999)、柿沼瑛子訳、産業編集センター) 2007/4/1 ISBN 978-4-916199-98-0
- 『土の褥に眠る者』(A Bed of Earth (2002)、柿沼瑛子訳、産業編集センター) 2007/5/1 ISBN 978-4-86311-000-7
- 『復活のヴェヌス』(Venus Preserved (2003)、柿沼瑛子訳、産業編集センター) 2007/6/1 ISBN 978-4-86311-001-4
短編集
[編集]- 『冬物語』(The Winter Players and Companions on the Road、ハヤカワ文庫FT43) 1982/8/31
- 「冬物語」(The Winter Players (1975) 、室住信子訳)
- 「アヴィリスの妖杯」(Companions on the Road (1976)、森下弓子訳)
- 『幻想童話集 血のごとく赤く』(Red as Blood or Tales from Sisters Grimmer (1983)、ハヤカワ文庫FT232) 1997/4/30 ISBN 4-15-020232-X
- 「報われた笛吹き(アジア紀元前)」(Paid Piper (1981)、室住信子訳) - 初出は『S-Fマガジン』 1986/5 No.339
- 「血のごとく赤く(ヨーロッパ十四世紀)」(Red As Blood、室住信子訳) - 初出は『S-Fマガジン』 1981/3 No.271
- 「いばらの森(ユーラシア十五世紀)」(Thorns、木村由利子訳)
- 「時計が時を告げたなら(ヨーロッパ十六世紀)」(When the Clock Strikes、木村由利子訳)
- 「黄金の綱(ヨーロッパ十七世紀)」(The Golden Rope、木村由利子訳)
- 「姫君の未来(アジア十八世紀)」(The Princess and Her Future、木村由利子訳)
- 「狼の森(スカンジナビア十九世紀)」(Wolfland、木村由利子訳)
- 「黒のごとく赤く(スカンジナビア二十世紀)」(Black As Ink、木村由利子訳)
- 「緑の薔薇(地球未来)」(Beauty、木村由利子訳)
- 『タマスターラー インド幻想夜話』(Tamastara(The Indian Nights) (1984)、酒井昭伸訳、ハヤカワ文庫FT96) 1987/3/15 ISBN 4-15-020096-3
- 「龍(ナーガ)の都」(Foreign Skins)
- 「炎の虎」(Bright Burning Tiger) -「焔の虎」の題で『不思議な猫たち』(扶桑社ミステリー)に収載
- 「月の詩(チヤーンド・ヴエーダ)」(Chand Veda)
- 「運命の手」(Under the Hand of Chance)
- 「象牙の商人」(The Ivory Merchants)
- 「輝く星」(Oh Shining Star)
- 「暗黒の星(タマスターラー)」(Tamastara)
- 『ゴルゴン - 幻獣夜話』(The Goggon: and Other Beastly Tales (1985)、ハヤカワ文庫FT217) 1996/2/29 ISBN 4-15-020217-6
- 「ゴルゴン」(The Gorgon、佐田千織訳)- 1983 World Fantasy Award Short Fiction Winner
- 「アンナ・メディア」(Anna Medea、木村由利子訳)
- 「にゃ~お」(Meow、木村由利子訳)
- 「狩猟、あるいは死 - ユニコーン」(The Hunting of Death:The Unicorn、木村由利子訳)
- 「マグリットの秘密諜報員」(Magritte's Secret Agent、木村由利子訳)
- 「猿のよろめき」(Monkey's Stagger、佐田千織訳)
- 「シリアムニス」(Sirriamnis、佐田千織訳)
- 「海豹」(Because Our Skins Are Finer、佐田千織訳)
- 「ナゴじるし」(Quatt-Sup、木村由利子訳)
- 「ドラコ、ドラコ」(Draco Draco、佐田千織訳) - 木谷紗夢訳で『幻想文学』1986/10/15 No.16に収載
- 「白の王妃」(La Reine Blanche、木村由利子訳)
- 『悪魔の薔薇』(The Devil's Rose and Other Stories、中村融編、河出書房新社、奇想コレクション) 2007/9/30 ISBN 978-4-309-62199-9
- 「別離」(Nunc Dimittis、市田泉訳)
- 「悪魔の薔薇」(The Devil's Rose、安野玲訳)
- 「彼女は三(死の女神)」(Elle Est Trois, (La Mort)、安野玲訳)
- 「美女は野獣」(Beauty Is the Beast、市田泉訳)
- 「魔女のふたりの恋人」(Deux Amours D'une Sorciere、市田泉訳)
- 「黄金変成」(Into Gold、安野玲訳)
- 「愚者、悪者、やさしい賢者」(Foolish, Wicked, Clever and Kind、市田泉訳)
- 「蜃気楼と女呪者(マジア)」(Mirage and Magia、市田泉訳)
- 「青い壺の幽霊」(Blue Vase of the Ghosts、安野玲訳)
その他短編
[編集]- 「解凍の日」(The Thaw、酒匂真理子訳) - 『SF宝石』1980/6 No.6に掲載
- 「雨にうたれて」(Crying in the Rain、室住信子訳) - 『S-Fマガジン』 1988/6 No.366に掲載、のち『アザー・エデン』(クリストファー・エヴァンズ/ロバート・ホールドストック編、ハヤカワ文庫SF827)に収載
- 「神々の天秤」(In the Balance、木村由利子訳) - 『S-Fマガジン』 1996/12 No.486に掲載
- 「勿咬草(かみなぐさ)、あるいは炎の花」(Bite-Me-Not; or Fleur de Feu、木村由利子訳) - 『S-Fマガジン』 1997/11 No.497に掲載
- 「時の過ぎゆくままに」(As Time Goes By、酒井昭伸訳) - 『S-Fマガジン』 1987/4 No.351に掲載
- 「白い魔女」(The Demoness、小宮山康宏訳) - 『別冊・奇想天外 SFファンタジイ大全集』 1980/3 No.10に掲載
- 「貴婦人」(La Dame、小林理子訳) - 『死の姉妹』(バーバラ・ハムリー、マーティン・H・グリーンバーグ編、扶桑社ミステリー)に掲載
- 「水に書いた愛」(Written Water、黒丸尚訳) - 『SFアドベンチャー』 1991/ 5 No.138に掲載
- 「ジャンフィアの木」(The Janfia Tree、小梨直訳) - 『血も心も』 (エレン・ダトロウ編、新潮文庫)に収載
- 「顔には花、足には刺」(Flowers for Faces, Thorns for Feet、佐田千織訳) - 『魔猫』(エレン・ダトロウ編、早川書房)に収載
- 「ヒューマン・ミステリ」(The Human Mystery、日暮雅通訳) - 『シャーロック・ホームズ 四人目の賢者』(マーティン・H・グリーンバーグ,キャロル=リン・R・ウォー,ジョン・L・レレンバーグ共編、原書房)に収載
- 「罪のごとく白く、今」(市田泉訳) - 『S-Fマガジン』 2015/10 No.711に掲載
外部リンク
[編集]- Tanith-Lee.com(公式サイト)
- The Telegraph 6:18PM BST 28 May 2015 Tanith Lee, writer - obituary(死亡記事のアーカイブ)
脚注
[編集]- ^ a b 「ダークファンタジーの女王」タニス・リーさん死去 スポーツニッポン 2015年5月27日閲覧