トリプルスリー
トリプルスリー (Triple three) は、日本プロ野球において打者が同一シーズンに「打率3割・30本塁打・30盗塁」以上の成績を記録することを意味する用語であり、和製英語[1][2]である。
概要
[編集]岩本義行、 別当薫 、中西太が達成した時代はトリプルスリーという言葉は存在せず、野球ファンに記録が注目を浴びるようになったのは1980年代からと言われており、1983年に簑田浩二が達成した際には野球雑誌などで取り上げられた[3][4]。
野球の攻撃分野(打力、走力)において隙の無い好打者であることを証明するものとされ[5]、これを目標とする打者も存在する[注 1]。
川上哲治は1950年、長嶋茂雄は1958年に、いずれも本塁打1本の差でトリプルスリーを逃した。特に長嶋は、一塁を踏み忘れて「幻の本塁打」となった1本があったために記録を逃した[12]。
2015年シーズンではソフトバンクの柳田悠岐とヤクルトの山田哲人の二人がトリプルスリーを達成した[13]。日本プロ野球での達成者は2002年に松井稼頭央が達成して以来13年ぶりで、複数人達成は1950年に岩本と別当が達成して以来65年ぶりのことで話題となり、トリプルスリーは2015年ユーキャン新語・流行語大賞の年間大賞に選出された[14]。その後山田は翌2016年、2018年にもトリプルスリーを達成。2年連続及び複数回のトリプルスリー達成は日本プロ野球史上初である[15]。
アメリカでは、年間30本塁打と30盗塁の同時達成は"30-30"と呼ばれて高く評価される(30-30クラブの項を参照)ものの、これにさらに打率.300到達を加えた成績が特別視されることはなく、トリプルスリーという概念自体がほとんど知られていない[4]。例えば英字新聞のジャパンタイムズが2000年の金本知憲の成績に言及した記事(共同通信社配信)では、"Triple Three" という表現は用いられずに ".300-30-30 player" [16](3割30本塁打30盗塁選手)と言い換えられていた。同じくジャパンタイムズが2015年の山田の成績に言及した記事(こちらも共同通信社配信)では "achieved what is known in Japan as the 'Triple Three'" [17](『トリプルスリー』と日本では呼ばれる成績を達成した)と、日本限定の基準であることが補足されていた。
スポーツライターの宇根夏樹は、トリプルスリーという名称の由来はバスケットボールの「トリプル・ダブル」ではないかと推測している[18][信頼性要検証]。
達成者
[編集]日本プロ野球
[編集]名前 | 年 | 達成時の所属球団 | 打率 | 本塁打 | 盗塁 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
岩本義行 | 1950年 | 松竹ロビンス | .319 | 39 | 34 | 38歳での達成は史上最年長記録[19] |
別当薫 | 1950年 | 毎日オリオンズ | .335 | 43 | 34 | |
中西太 | 1953年 | 西鉄ライオンズ | .314 | 36 | 36 | 20歳での達成は史上最年少記録[20]。 |
簑田浩二 | 1983年 | 阪急ブレーブス | .312 | 32 | 35 | 1980年にはNPB史上唯一の30本塁打30盗塁30犠打も記録[20]。 |
秋山幸二 | 1989年 | 西武ライオンズ | .301 | 31 | 31 | |
野村謙二郎 | 1995年 | 広島東洋カープ | .315 | 32 | 30 | 左打者では初 |
金本知憲 | 2000年 | 広島東洋カープ | .315 | 30 | 30 | 30号本塁打は最終戦で達成[20][21]。 |
松井稼頭央 | 2002年 | 西武ライオンズ | .332 | 36 | 33 | 両打ちでは初[22]。30二塁打同時達成も史上初[23]。 |
山田哲人 | 2015年 | 東京ヤクルトスワローズ | .329 | 38 | 34 | セントラル・リーグ史上最年少で達成[24]。 |
柳田悠岐 | 2015年 | 福岡ソフトバンクホークス | .363 | 34 | 32 | 同年に2人目の達成者(65年ぶり2回目)[25]。 |
山田哲人 | 2016年 | 東京ヤクルトスワローズ | .304 | 38 | 30 | NPB史上初の複数回(2年連続)達成[15]。 |
山田哲人 | 2018年 | 東京ヤクルトスワローズ | .315 | 34 | 33 |
メジャーリーグベースボール
[編集]#概要節で述べたように、英語圏ではトリプルスリーという概念自体が普及していない。以下の一覧は"30-30クラブ"(30本塁打30盗塁達成者)のうち打率3割以上の成績を抜き出したものである。
名前 | 年 | 球団 | 打率 | 本塁打 | 盗塁 | 守備位置 |
---|---|---|---|---|---|---|
ケン・ウィリアムズ | 1922年 | セントルイス・ブラウンズ | .332 | 39 | 37 | 左翼手 |
ウィリー・メイズ | 1957年 | ニューヨーク・ジャイアンツ | .333 | 35 | 38 | 中堅手 |
ハンク・アーロン | 1963年 | ミルウォーキー・ブレーブス | .319 | 44 | 31 | 右翼手 |
デール・マーフィー | 1983年 | アトランタ・ブレーブス | .302 | 36 | 30 | 中堅手 |
ホセ・カンセコ | 1988年 | オークランド・アスレチックス | .307 | 42 | 40 | 右翼手 |
バリー・ボンズ | 1990年 | ピッツバーグ・パイレーツ | .301 | 33 | 52 | 左翼手 |
ロン・ガント | 1990年 | アトランタ・ブレーブス | .303 | 32 | 33 | 中堅手 |
バリー・ボンズ | 1992年 | ピッツバーグ・パイレーツ | .311 | 34 | 39 | 左翼手 |
バリー・ボンズ | 1996年 | サンフランシスコ・ジャイアンツ | .308 | 42 | 40 | 左翼手 |
ダンテ・ビシェット | 1996年 | コロラド・ロッキーズ | .313 | 31 | 31 | 右翼手 |
エリス・バークス | 1996年 | コロラド・ロッキーズ | .344 | 40 | 32 | 左翼手 |
ラリー・ウォーカー | 1997年 | コロラド・ロッキーズ | .366 | 49 | 33 | 右翼手 |
ラウル・モンデシー | 1997年 | ロサンゼルス・ドジャース | .310 | 30 | 32 | 右翼手 |
アレックス・ロドリゲス | 1998年 | シアトル・マリナーズ | .310 | 42 | 46 | 遊撃手 |
ジェフ・バグウェル | 1999年 | ヒューストン・アストロズ | .304 | 42 | 31 | 一塁手 |
ブラディミール・ゲレーロ | 2001年 | モントリオール・エクスポズ | .307 | 34 | 37 | 右翼手 |
ブラディミール・ゲレーロ | 2002年 | モントリオール・エクスポズ | .336 | 39 | 40 | 右翼手 |
アルフォンソ・ソリアーノ | 2002年 | ニューヨーク・ヤンキース | .300 | 39 | 41 | 二塁手 |
ボビー・アブレイユ | 2004年 | フィラデルフィア・フィリーズ | .301 | 30 | 40 | 右翼手 |
デビッド・ライト | 2007年 | ニューヨーク・メッツ | .325 | 30 | 34 | 三塁手 |
ハンリー・ラミレス | 2008年 | フロリダ・マーリンズ | .301 | 33 | 35 | 遊撃手 |
ジャコビー・エルズベリー | 2011年 | ボストン・レッドソックス | .321 | 32 | 39 | 中堅手 |
マット・ケンプ | 2011年 | ロサンゼルス・ドジャース | .324 | 39 | 40 | 中堅手 |
ライアン・ブラウン | 2011年 | ミルウォーキー・ブルワーズ | .332 | 33 | 33 | 左翼手 |
マイク・トラウト | 2012年 | ロサンゼルス・エンゼルス | .326 | 30 | 49 | 中堅手 |
ライアン・ブラウン | 2012年 | ミルウォーキー・ブルワーズ | .319 | 41 | 30 | 左翼手 |
ムーキー・ベッツ | 2018年 | ボストン・レッドソックス | .346 | 32 | 30 | 右翼手 |
クリスチャン・イエリッチ | 2019年 | ミルウォーキー・ブルワーズ | .329 | 44 | 30 | 右翼手 |
ロナルド・アクーニャ・ジュニア | 2023年 | アトランタ・ブレーブス | .337 | 41 | 73 | 右翼手 |
大谷翔平 | 2024年 | ロサンゼルス・ドジャース | .310 | 54 | 59 | 指名打者 |
ボビー・ウィット・ジュニア | 2024年 | カンザスシティ・ロイヤルズ | .332 | 32 | 31 | 遊撃手 |
- 1人の達成最多回数は、バリー・ボンズの3回。
韓国プロ野球
[編集]名前 | 年 | 球団 | 打率 | 本塁打 | 盗塁 |
---|---|---|---|---|---|
李鍾範(イ・ジョンボム) | 1997年 | ヘテ・タイガース | .324 | 30 | 64 |
李炳圭(イ・ビョンギュ) | 1999年 | LGツインズ | .349 | 30 | 31 |
ジェイ・デイビス | 1999年 | ハンファ・イーグルス | .328 | 30 | 35 |
洪弦佑(ホン・ヒョヌ) | 1999年 | ヘテ・タイガース | .300 | 34 | 31 |
朴栽弘(パク・チェホン) | 2000年 | 現代ユニコーンズ | .309 | 32 | 30 |
エリック・テイムズ | 2015年 | NCダイノス | .381 | 47 | 40 |
金倒永(キム・ドヨン) | 2024年 | 起亜タイガース | .347 | 38 | 40 |
台湾プロ野球
[編集]- 林智勝(Lamigoモンキーズ・2015年):打率.380、31本塁打、30盗塁[27]
- 台湾球界初(2015年現在、唯一)のトリプルスリー達成者[27]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ 芝山幹郎 (2015年8月29日). “ゴールドシュミットと山田哲人。~3割30本30盗塁達成なるか!?~”. Number Web. スポーツ・インサイドアウト. 文藝春秋社. 2018年10月18日閲覧。
- ^ 友成那智 (2016年10月17日). “「トリプルスリー」は和製英語”. 日刊ゲンダイDIGITAL. 読むメジャーリーグ. 日刊ゲンダイ. 2018年10月18日閲覧。
- ^ “怪童・中西太も盗塁数で達成できず。山田・柳田、前人未到「2度目のトリプル3」なるか”. ベースボールチャンネル. 2017年2月8日閲覧。
- ^ a b 広尾晃 (2018年11月6日). “山田哲人とベッツ、「トリプルスリー」と「30-30」に見る日米野球文化の違い”. Full-Count. 2019年1月20日閲覧。
- ^ 小中翔太 「最も価値あるトリプルスリーは松井稼頭央だった」Yahoo!ニュース(2014年8月4日)、2014年11月5日閲覧。
- ^ 「糸井 ソフトB柳田と化け物トレ 目標はトリプルスリー」Sponichi Annex 2014年9月29日閲覧。
- ^ 「西武・浅村栄斗「目標はトリプルスリーとデレク・ジーター」」web Sportiva 2014年9月29日閲覧。
- ^ 「陽岱鋼 トリプルスリー号砲先頭弾 下半身強化で9人目快挙へ」Sponichi Annex 2014年11月14日閲覧。
- ^ 「松田 トリプルスリーへ「グー」より「パー」脱力走法」Sponichi Annex 2014年11月14日閲覧。
- ^ 「西武中島09年目標は「トリプルスリー」」 nikkansports.com 2014年11月15日閲覧。
- ^ 「井口、日本での目標はトリプル3 ロッテ入団会見」 47NEWS 2015年6月7日閲覧。[リンク切れ]
- ^ 「【9月19日】1958年(昭33) ミスター、幻の28号本塁打でトリプルスリーを逃す Archived 2015年9月24日, at the Wayback Machine.」Sponichi Annex 2013年12月30日閲覧。
- ^ 柳田、トリプル3達成 パ首位打者も確実 同一年2人は65年ぶりスポニチアネックス 2015年10月5日配信
- ^ 自由国民社. “2015ユーキャン新語・流行語大賞発表”. 2015年12月1日閲覧。
- ^ a b “ヤクルト・山田哲人が2年連続「トリプルスリー」&100打点達成、史上初の快挙”. 産経ニュース (産経新聞社). (2016年10月1日) 2016年10月2日閲覧。
- ^ “Carp ink Kanemoto for 222 million yen” (英語). The Japan Times. Kyodo News. (2000年12月16日). オリジナルの2020年9月28日時点におけるアーカイブ。 2018年10月2日閲覧。
- ^ “NPB legend Harimoto issues challenge to Swallows' Yamada” (英語). The Japan Times. Kyodo News. (2016年2月20日). オリジナルの2016年4月3日時点におけるアーカイブ。 2018年10月3日閲覧。
- ^ 「トリプルスリー」から打率3割を外し、これを加えて「新トリプルスリー」とすると…。達成者は3人だけ
- ^ 37歳糸井「金本曲線」で悲願のトリプルスリー達成なるか
- ^ a b c 「山田、柳田の同時達成はほぼ間違いなし! 過去のトリプルスリー達成者とは?」ベースボールキング 2015年9月8日 2015年9月24日閲覧。
- ^ 「トリプルスリーの“アニキ”金本氏が語る ヤク山田の3つの凄さ」Sponichi Annex 2015年9月11日閲覧。
- ^ “リトル松井がやってくる ESPNが電子版で紹介”. 47NEWS. 2014年11月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年2月21日閲覧。
- ^ “松井「1番がベスト」”. nikkansports.com. 2005年5月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年2月20日閲覧。
- ^ 「セリーグ最年少「トリプルスリー」ヤクルト山田哲人!球団から30歳まで結婚NG指令」 J-CASTテレビウォッチ 2015年10月9日閲覧。
- ^ 「ホークス柳田、トリプルスリー達成! 山田と同時達成は65年ぶり快挙に」 Full-count 2015年10月9日閲覧。
- ^ 「トリプルスリー 各種記録達成者一覧 | 達成記録 | NPB.jp 日本野球機構」2023年1月8日閲覧。
- ^ a b ラミゴの林智勝が職棒初のトリプルスリーを達成。 - Twitter
関連項目
[編集]- 30-30クラブ - メジャーリーグにおける30本塁打30盗塁達成者
- 40-40クラブ - メジャーリーグにおける40本塁打40盗塁達成者
- 300-300クラブ
- 20-20-20クラブ