ニール・ヤング

ニール・ヤング
OC OM
ノルウェー・スタヴェルン公演 (2016年7月)
基本情報
出生名 ニール・パーシヴァル・ヤング
別名 バーナード・シェイキー[1]
生誕
ジャンル グランジ
職業
担当楽器
活動期間 1963年 -
レーベル
共同作業者
公式サイト Neil's Garage

ニール・パーシヴァル・ヤング英語: Neil Percival Young1945年11月12日 - )は、カナダトロント出身のフォーク、フォーク・ロックのシンガーソングライターである。クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤングバッファロー・スプリングフィールドのメンバーとしても活躍し[3]1969年にソロデビューした。代表曲には「孤独の旅路」、代表アルバムには『ハーヴェスト』などがある。1995年にはロックの殿堂入りを果たしている。

1972年、80年、96年、2018年にサウンドトラック・アルバムを発表している。バンクーバーオリンピックの閉会式では、カナダ代表のミュージシャンとしてライブ・パフォーマンスをした。「ローリング・ストーンの選ぶ歴史上最も偉大な100人のギタリスト」において2003年は第83位、2011年の改訂版では第17位。

ローリング・ストーンの選ぶ歴史上最も偉大な100人のシンガー」において第37位[4]。「ローリング・ストーンの選ぶ歴史上最も偉大な100組のアーティスト」において第34位。

Q誌の選ぶ歴史上最も偉大な100人のシンガー」において第65位[5]

経歴

[編集]
若き日のニール (1976年)

1945年11月12日、カナダ、オンタリオ州のトロントで生まれた。父はジャーナリストでスポーツ・ライターであり、母はドーターズ・オブ・ジ・アメリカン・レボリューションの会員だった。彼は、ロックンロール、ロカビリー、ドゥーワップ、カントリーなどの影響を受けた。さらに、エルヴィス・プレスリーを筆頭に、チャック・ベリー、ハンク・マーヴィン、リトル・リチャード、ファッツ・ドミノ、シャンテルズ、モノトーンズ、ロニー・セルフ、フリートウッズ、ジョニー・キャッシュロイ・オービソンらから音楽的影響を受けた。やがてヤングはカナダのマニトバ大学に進学し、「4次元フォーク・クラブ」に入る。そのクラブにはジョニ・ミッチェルがいた[6]。二人は「シュガー・マウンテン」などをいっしょに歌った。同曲に対するミッチェルのアンサー・ソングが「サークル・ゲーム」である。ゲス・フーのランディ・バックマンとも知り合った。ニールはマイナー・バーズというグループを組んだが、同バンドには後に大成功するリック・ジェームスも在籍していた。

1966年、スティーヴン・スティルスらとともにバッファロー・スプリングフィールドを結成した[7]。このグループは、同年7月に『クランシーは歌わない(原題Nowadays Clancy Can't Even Sing)』でデビューし、成功を収めたが1968年5月に解散した。

1969年1月、ヤングはファースト・ソロ・アルバム『ニール・ヤング』を発表した。同年、セカンド・アルバムのレコーディングのためにバックバンド結成を構想したヤングは、6人編成のバンドのザ・ロケッツからダニー・ウィットン(ギター)、ラルフ・モリーナ(ドラムス)、ビリー・タルボット(ベース)の3人を彼のバックバンドとして雇い入れ、クレイジー・ホースが結成された。同年5月、クレイジー・ホースと共にセカンド・アルバム『ニール・ヤング・ウィズ・クレイジー・ホースEverybody Knows This Is Nowhere)』を発表。

クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング

同年6月頃、クロスビー、スティルス&ナッシュに加入[8]した。同グループはクロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤングへと発展した。

1972年1月発売の4枚目のアルバム『ハーヴェスト』がアメリカ、イギリス、カナダで1位を記録した。同年11月18日、ダニー・ウィットンがヘロイン中毒のため死亡。クレイジー・ホースには新メンバーとしてギタリストのフランク・サンペドロが加入した(なお、ニールとの活動とは別に、クレイジー・ホースとしてのアルバムも発表している)。

ゲフィン・レコードに移籍してからは、シンセサイザーヴォコーダーを多用した『トランス』(1982年)、ロカビリーに特化した『エヴリバディズ・ロッキン』(1983年)といった異色作のリリースが続き、1983年12月にはゲフィン側が「ニール・ヤングらしくないアルバムばかり作っている」という理由でヤングを訴える事態となった[9]。それに対してヤングは、アーティストの自由を主張し、最終的にはゲフィン側がヤングに謝罪した[9]。そして、1987年の『ライフ』でゲフィンとの契約を満了し、古巣のリプリーズ・レコードに復帰した[9]

ヤングはフォークカントリー、ロカビリー、テクノグランジなど、発表作品ごとにバラエティに富んだアプローチをとることが多い。

ボーカルも個性的で、その鼻にかかったような弱々しい印象のハイトーンの声は、バラードには無垢な繊細さ、グランジ風の曲の際にはアナーキーな雰囲気をかもしている。ギタープレイは、テクニカルな側面は強くないが、歪ませた爆音を含むそのプレイは個性的なものである。また、武骨かつ繊細なアコースティック・ギターのプレイも「孤独の旅路」「ロッタ・ラヴ」などでお馴染みとなっている。

1995年にソロとして、1997年にはバッファロー・スプリングフィールドとしてロックの殿堂入りを果たした[10]。ただし、ヤングは1997年の授賞式に関しては、テレビと連動した手法に異議を唱えて出演拒否した[10]

1990年湾岸戦争の際には、コンサート会場でボブ・ディランの「風に吹かれて」を歌い、また2001年アメリカ同時多発テロ直後には、放送が自粛されていたジョン・レノンの「イマジン」を敢えて歌った。そしてイラク戦争後は、ブッシュ政権反対の姿勢を鮮明にした。

ミュージシャン達の交友範囲は、同世代から若手まで幅広い。ロックの殿堂の授賞式では、これまでジミ・ヘンドリックスポール・マッカートニープリテンダーズトム・ウェイツの4組のプレゼンターを務め、逆にニールのプレゼンターをパール・ジャムエディ・ヴェダーが務めた。また、ニルヴァーナカート・コバーンの自殺に深く心を痛めた(コバーンの遺書には、ニールの歌詞の一節が引用されていた)。

社会的活動

[編集]

ウィリー・ネルソンとともに始めた「ファーム・エイド」にも、設立以来長年にわたって参加しており、農業経営者への支援を呼びかけている。ファーム・エイドにはジョン・メレンキャンプ、エミルー・ハリス、ヴィンス・ギル、アレックス・ハーヴェイ、ステッペン・ウルフ、ボブ・ディラン、BBキング[11]らが参加したことがある。また数十組が参加した85年以降も毎回、日本で報道されるよりもはるかに大勢のミュージシャンが参加している。化学企業のモンサント社に反対したり、ノース・ダコタ州への石油パイプ・ラインに反対[12]したりと、若き日と変わらぬ社会問題への関心の深さを示している。石油パイプ・ライン反対運動への曲「Indian Givers」も発表している。

自身の子供が障害児であるという経緯から、障害者の支援にも積極的に関わっており、妻のペギとともにチャリティー・コンサート「ブリッジ・スクール・ベネフィット・コンサート」を毎年開催、自身の顔の広さを活かし、過去にボブ・ディランサイモン&ガーファンクルエルトン・ジョンルー・リードピート・タウンゼントブライアン・ウィルソンドン・ヘンリーブルース・スプリングスティーントム・ペティエルヴィス・コステロジャクソン・ブラウンジェームス・テイラーR.E.M.レッド・ホット・チリ・ペッパーズソニック・ユースパール・ジャムシェリル・クロウスマッシング・パンプキンズグリーン・デイベックフー・ファイターズノラ・ジョーンズなどの錚々たるミュージシャンを招いている。

ギャラリー

[編集]

ディスコグラフィ

[編集]
発表年 アルバム名 名義
邦題 原題
オリジナル・アルバム
1969年1月 ニール・ヤング Neil Young Solo
1969年5月 ニール・ヤング・ウィズ・クレイジー・ホース Everybody Knows This Is Nowhere Crazy Horse
1970年8月 アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ After The Gold Rush Solo
1972年 ハーヴェスト Harvest The Stray Gators
1972年 過去への旅路 Journey Through the Past Solo
1973年 時は消え去りて Time Fades Away The Stray Gators
1974年 渚にて On the Beach Solo
1975年6月 今宵その夜 Tonight's The Night The Santa Monica Flyers
1975年11月 ズマ Zuma Crazy Horse
1976年9月 太陽への旅路 "Long May You Run" Stills-Young Band
1977年 アメリカン・スターズン・バーズ American Stars N' Bars Solo
1978年10月 カムズ・ア・タイム Comes a Time Solo
1979年7月 ラスト・ネヴァー・スリープス Rust Never Sleeps Crazy Horse
1979年11月 ライヴ・ラスト Live Rust Crazy Horse
1980年 タカ派とハト派 Hawks & Doves Solo
1981年 リアクター Re·ac·tor Crazy Horse
1982年 トランス Trans Solo
1983年 エヴリバディズ・ロッキン Everybody's Rockin Shocking Pinks
1985年 オールド・ウェイズ Old Ways Solo
1986年7月 ランディング・オン・ウォーター Landing On Water Solo
1987年 ライフ Life Crazy Horse
1988年4月 ディス・ノーツ・フォー・ユー This Note's For You The Bluenotes
1989年10月 フリーダム Freedom Solo
1990年9月 傷だらけの栄光 Ragged Glory Crazy Horse
1991年10月 ウェルド:ライブ・イン・ザ・フリー・ワールド Weld Crazy Horse
1991年11月 Arc Crazy Horse
1992年10月 ハーヴェスト・ムーン Harvest Moon Solo
1993年6月 アンプラグド Unplugged Solo
1994年8月 スリープス・ウィズ・エンジェルズ Sleeps With Angels Crazy Horse
1995年6月 ミラー・ボール Mirror Ball Solo
1996年3月 デッドマン (オリジナル・サウンドトラック) Deadman OST Solo
1996年7月 ブロークン・アロー Broken Arrow Crazy Horse
1997年6月 イヤー・オブ・ザ・ホース Year Of The Horse Crazy Horse
2000年4月 シルヴァー・アンド・ゴールド Silver & Gold Solo
2000年11月 ロード・ロック Road Rock vol.1 Friends & Relatives
2002年3月 アー・ユー・パッショネイト? Are You Passionate? Solo
2003年8月 グリーンデイル Greendale Crazy Horse
2005年10月 プレーリー・ウィンド Prairie Wind Solo
2006年6月 リヴィング・ウィズ・ウォー Living With War Solo
2007年10月 クローム・ドリームスII Chrome Dreams II Solo
2009年4月 フォーク・イン・ザ・ロード Fork in the Road Solo
2010年9月 ル・ノイズ Le Noise Solo
2012年6月 アメリカーナ Americana Crazy Horse
2012年8月 サイケデリック・ピル Psychedelic Pill Crazy Horse
2014年4月 ア・レター・ホーム A Letter Home Solo
2014年11月 ストーリートーン Storytone Solo
2015年6月 ザ・モンサント・イヤーズ The Monsanto Years Promise of the Real
2016年6月 アース Earth Promise of the Real
2016年12月 ピース・トレイル Peace Trail Solo
2017年9月 ヒッチハイカー(1976年レコーディング) Hitchhiker Solo
2017年12月 ザ・ヴィジター The Visitor Promise of the Real
2018年4月 パラドックスの瞬間(とき)(オリジナル・サウンドトラック) Paradox (Original Music from the Film) Promise of the Real
2019年10月 コロラド Colorado Crazy Horse
2020年6月 ホームグロウン(1975年レコーディング) Homegrown Solo
2021年12月 バーン Barn Crazy Horse
2022年7月 トースト(2001年レコーディング) toast Crazy Horse
2022年11月 ワールド・レコード World Record Crazy Horse
2023年8月 クローム・ドリームス(1977年レコーディング) Chrome Dreams Solo
2023年12月 ビフォア・アンド・アフター Before and After Solo
2024年4月 ファッキン・アップ Fu##in' Up Crazy Horse
2024年6月 アーリー・デイズ(1969年レコーディング) Early Daze Crazy Horse
コンピレーション
1977年11月 デケイド:輝ける10年 Decade
1993年1月 ラッキー・サーティーン Lucky Thirteen
2004年11月 グレイテスト・ヒッツ Greatest Hits
アーカイブシリーズ
2006年11月 ライヴ・アット・ザ・フィルモア・イースト Live At The Fillmore East Crazy Horse
2007年4月 ライヴ・アット・マッシー・ホール1971 Live At Massey Hall 1971 Solo
2008年12月 シュガー・マウンテン・ライヴ・アット・カンタベリー・ハウス・1968 Sugar Mountain: Live at Canterbury House 1968 Solo
2009年6月 Neil Young Archives Volume 1:1963-1972
2009年12月 ドリーミン・マン・ライヴ '92 Dreamin' Man Live '92 Solo
2011年7月 ア・トレジャー A Treasure Solo
2014年1月 ライヴ・アット・ザ・セラー・ドア Live at the Cellar Door Solo
2015年11月 ブルーノート・カフェ Neil Young and Bluenote Cafe Solo
2018年4月 ロキシー:トゥナイツ・ザ・ナイト(今宵その夜)・ライヴ Roxy: Tonight's the Night Live The Santa Monica Flyers

来日公演

[編集]
3月3日・愛知県体育館、3月4日-3月6日・フェスティバルホール、3月8日・九電記念体育館、3月10日-3月11日・日本武道館
4月27日・横浜文化体育館、4月28日-4月30日・NHKホール、5月2日・フェスティバルホール、5月5日・名古屋市公会堂
7月28日・フジ・ロック・フェスティバル
  • 2003年(Crazy Horse - Greendale tour)
11月10日・大阪城ホール、11月12日・福岡サンパレス、11月14日-11月15日・日本武道館

脚注

[編集]
  1. ^ Carr, David (2012年9月19日). “Neil Young Comes Clean”. New York Times (The New York Times Company). https://www.nytimes.com/2012/09/23/magazine/neil-young-comes-clean.html?pagewanted=all 2021年4月3日閲覧。 
  2. ^ a b c d Erlewine, Stephen Thomas. “Neil Young | Biography & History”. AllMusic. All Media Group. 2021年4月3日閲覧。
  3. ^ Erlewine, Stephen Thomas. “Buffalo Springfield | Biography & History”. AllMusic. All Media Group. 2021年4月3日閲覧。
  4. ^ Rolling Stone. “100 Greatest Singers: Neil Young”. 2013年5月26日閲覧。
  5. ^ Rocklist.net...Q Magazine Lists..”. Q - 100 Greatest Singers (2007年4月). 2013年5月21日閲覧。
  6. ^ http://www.discogs.com/artist/90233-Joni-Mitchell
  7. ^ “Buffalo Springfield”. Rollingstone.com. https://www.rollingstone.com/music/artists/buffalo-springfield 01 March 2022閲覧。. 
  8. ^ CSN Box Set Tracklist
  9. ^ a b c Irwin, Corey (2018年12月1日). “35 Years Ago: Neil Young is Sued for Not Sounding Like Neil Young”. Ultimate Classic Rock. Loudwire Network. 2018年12月19日閲覧。
  10. ^ a b Hilburn, Robert (1997年5月7日). “Rock Hall of Fame Inductee Neil Young Boycotts Event”. Los Angeles Times. 2018年4月1日閲覧。
  11. ^ Past Farm Aid Concerts & Festivals
  12. ^ ニール・ヤング、ドナルド・トランプとパイプライン建設をめぐって長文のテキストを投稿。全文訳を公開2016年11月29日

参考文献

[編集]
  • ピーター・ドゲット 著、川村まゆみ 訳『CSNY――クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤングの真実』DU BOOKS、2020年6月26日。ISBN 9784866471044 

関連人物/集団

[編集]

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]