例損
例損(れいそん)とは、毎年通常の理由により、慣例として認められている国家的な収得の損失。律令制における法制語で、国司の徴税請負制の展開によって生まれたものである。
概要
[編集]以下の2つのパターンが見受けられる。
- 日本古代、とりわけ平安時代において、田租納入に際し、毎年旱(かん)・水・虫・霜害などの自然災害などによる田地の収穫の減少(損田)が10分の3以下を例損といい、その分を損分として恒常的な損失(常例)として免じ、国司の自由裁量に任せた。加えて、損七分以上の損戸の限度内の戸数をも指し、大国49戸以下、上国39戸以下、中国29戸以下、下国19戸以下がそれにあたる。これらを「不三得七の法」といい、これを越える場合を「異損」という。『延喜式』には、「凡下野、讚岐等国、大国に准じ、四十九戸例損を聴す」とある[1]。
- 主計寮における大帳の勘会(照合)の際に、調庸の増減の原因を示すもので、重病や死亡や老衰、あるいは年齢が増して(調庸負担者である)正丁が老丁となるなどの、特に異常ではない理由によって、本人の調庸を減免した。同じく『延喜式』によると、「例に依り、損する所、以て例損と為す」とある[1]。
例損の法は、中世の荘園法にも引きつがれ、『東大寺続要録』寺領章には「例損三町八段」とある。
脚注
[編集]参考文献
[編集]- 『角川第二版日本史辞典』p1004、高柳光寿・竹内理三:編、角川書店、1966年
- 『日本古代史事典』p467、遠藤元男:編、朝倉書店、1973年
- 『国史大辞典』第十四巻p700、文:虎尾俊哉、吉川弘文館、1993年
- 『岩波日本史辞典』p1198、監修:永原慶二、岩波書店、1999年