姫カット
姫カット(ひめカット)とは、女性の髪型のひとつ。名称からわかるように姫+cutの呼び方は現代[いつ?]につけられたものである。お姫様カット[2]、姫さまカットとも。
概要
姫カットは、尼削ぎや振り分け髪と呼ばれていた伝統的な女性の髪型と、鬢削ぎの習慣を現代風にアレンジしたもので、とりわけ特徴的なぱっつん前髪は現代風のものである。前髪を額に垂れさせて目の上で切りそろえるスタイル(目刺し)は古くは女児のものであり、鬢削ぎを経た成人女性の髪型は振り分け髪にするのが通常だった。
内巻きのおかっぱのような少女らしいレトロな雰囲気と、西洋とはまた違ったお姫様らしい雰囲気が出るため、ゴシック・アンド・ロリータやロリータ・ファッションでは理想的な髪型として“縦ロール”とともに挙げられる。
由来
この髪形のアレンジの元である尼削ぎは古くからあり、平安時代には女性の美の象徴が長い髪であり、まだその長い髪を育てるに至らない稚児の「目刺し」の状態をさしており(もっとも、元は出家して剃髪した尼僧の髪型を指す)、清少納言はこの髪型(尼削ぎ)のうつくしさ・かわいらしさを枕草子に記している。
頭(かしら)は尼削ぎなるちごの、目に髪の覆へるをかきはやらで、うち傾きて物など見たるも、うつくし(枕草子145段)
この髪型は女児の顔を大きくふくよかに丸く見せる効果がある事から喜ばれ、大正期にはすでに伝統的な髪型として定着したものとみられる。
一方で平安後期・鎌倉・室町中期には女性の成人儀式として「鬢削ぎ(びんそぎ)」が行われるようになり、女性が成人すると垂れ髪の鬢(サイド、耳にかかる部分)を短く切り揃える(削ぐ)ことから鬢削ぎと言われる。庶民の間でも広まり、流行した髪形のようである。
“姫カット”の由来としては、上記の“平安貴族の姫に似た髪形”という認識がもとであると思われる。また、似た髪型をした70年代に始まった小学館の学年別学習雑誌の少女漫画「姫子シリーズ」キャラクターの「姫子」が存在している。同時代にアイドルだった麻丘めぐみや、早乙女愛も姫カットがトレードマークだった。
実際の平安女性貴族の髪形は額を出すのが常だが、ロリータ・ファッションでは厚い前髪をまっすぐに切り揃えるのが主流である(ぱっつん前髪)[3]。サイドを頬のラインまで短くカットしたアレンジでは1920年代に流行したモダンガールの髪型(ボブカット、ブルックスカット)も思わせる。
スタイリング
一般にはロングヘアと呼ばれる髪型のアレンジのひとつであるが、自然なカールが出ないようにストレートアイロンを当て[4]、通常のロングとは異なり左右の前髪につながるサイドの髪の部分を顎にあたる長さで切りそろえ、アレンジによりぱっつん前髪や振り分け髪にする。
非常に特徴的なシルエットを作り出すが通常のロングヘアと異なりアレンジが拘束されてしまい、またせっかくのロングをサイドやフロントで大きくカットしてしまうことが欠点である。こめかみ部分からカットしたいサイドを残して一度後ろで結束してしまい、顎や頬のラインでカットしたのち元に戻せば無難に出来上がる。古典的な振り分け髪の場合は、フロントが長くなりすぎないよう適宜すき切りにし頭頂から左右に振り分け、場合によりヘアスプレーやヘアピンなどで纏める。後ろを束ねる、あるいは編み上げ、髪飾りを使用するのがむしろ古典的な盛装である。現代風アレンジの大胆なサイドカットの場合、顔と体格のバランスやカットによってはおかしなことになってしまいがちであり、事前にウィッグで確かめるなりするのが無難である。
脚注
- ^ かなり大胆に鬢削ぎが行われている例
- ^ “姫カットとは?可愛い切り方は?ショートカット/ボブ/ロング”. Cuty. 2022年11月10日閲覧。
- ^ 著:植田裕子, マーブルブックス「ロリータ衣装道楽」, ISBN 978-4123900867
- ^ なお「ストレート」が日本の伝統的美意識だとする解釈は正確ではなく、近世江戸期にはすでに中国文化の受容により縮毛が流行しており守貞謾稿にもその主旨の記述がある。鈴木昌子, 「日本における縮毛(II) : 洛中洛外図屏風(舟木本)と江戸名所図屏風を中心に」『山野研究紀要』 13巻 2005年 p.1-23, 山野美容芸術短期大学, doi:10.24714/yca.13.0_1。