漆工

漆工(しっこう)は、ウルシの樹液から精製される(うるし)を器物の表面に塗り重ね、様々な加飾を施す、東洋独特の伝統的技法。漆工芸(うるしこうげい)ともいう[1]。日本、中国、朝鮮半島で盛行し、東南アジアなどでも用いられた。器物に漆を塗る髹漆(きゅうしつ)が基本に挙げられる。これに加え、最近ではスクリーン印刷なども用いられる。

素地による分類

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木胎(もくたい)
木材[2]
乾漆(かんしつ)
木や粘土などで原型を作り、麻布などを漆で固め、後で原型を取り去ったもの[2]
乾漆は脱活乾漆と木心乾漆に分かれる。原型を土で作ったものは脱活乾漆(脱乾漆)と呼ばれ、原型を木で作ったものは木心乾漆と呼ばれる[3]
籃胎(らんたい)
竹を編んだもの[2]
漆皮(しっぴ)
動物(牛や鹿等)の皮を叩き締めて整形したもの。
紙胎(したい)
和紙[2]、近代では新聞紙も使われた。
貼り抜きとも言う。和紙肌を見せている場合は一閑張りまたは、一閑塗りと呼ばれる場合もある。
金胎(きんたい)
鉄の鋳物等[2]
著名な金胎漆器の例では、金胎蒔絵唐花文鉢(東京国立近代美術館蔵)などが存在する[4]
陶胎(とうたい)
焼き物[2]
NHK・連続テレビ小説「まれ」において、陶胎漆器が登場するエピソードがある[5]
巻胎(けんたい)
細く薄い木を巻いて使う。

加飾による分類

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蒔絵(まきえ)
漆で文様を描き、金粉などを降り掛け、文様部分に固着させる技法。
彫漆(ちょうしつ)
厚く塗り重ねた漆に文様を彫る技法。表面の色の違いにより堆朱、(ついしゅ)堆黒(ついこく)がある。中国の漆工、紅花緑葉は応用した技法である。
蒟醤(きんま
塗り重ねた漆に文様を彫り、色漆を塗り込んでから研ぎ、平面的な文様を描き出す技法。東南アジアで盛んに用いられている。
沈金(ちんきん)
漆を塗った器物の表面に文様を彫り、金箔や金粉を塗りこむ技法。中国の技法、戧金(そうきん)に同じ。
螺鈿(らでん)
文様の形に切った夜光貝等の貝殻を貼り付け、さらに漆を塗り研ぎ出す技法。
平文(ひょうもん)
金属(金、銀、錫等)の薄い板を文様の形に切って貼り付け、さらに漆を塗り平坦に研ぎ出す技法。金貝(かながい)ともいう。漆と金属の高低差があると平脱(へいだつ)となる。ただし近年は平文、平脱は同じ意味で取られている。
堆錦(ついきん)
琉球漆器を代表する漆工[6]。漆に多量の顔料を添加し堆錦餅を作り、それを加工し用いる。
スクリーン印刷
シルクスクリーン、単にスクリーンともいう。孔版画の技法(版画#孔版画、参照)を応用した現代の技法。

脚注

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  1. ^ コトバンク・漆工芸
  2. ^ a b c d e f 『漆の文化: 受け継がれる日本の美』 pp.108-109。木胎、金胎、陶胎、籃胎、紙胎(貼り抜き。和紙肌を見せている場合は一閑張りまたは、一閑塗り)、漆皮、乾漆についての説明がある。
  3. ^ 小学館『乾漆』 - コトバンク
  4. ^ 金胎蒔絵唐花文鉢 - 文化遺産オンライン文化庁
  5. ^ まれ#あらすじ」を参照。
  6. ^ 「沈金と堆錦技法の琉球漆器 : 朱漆鳳風牡丹文沈金東道盆と黒漆山水文堆錦総張文庫」参考

参考文献

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  • 横井時冬、1929、『日本工業史』、改造社〈改造文庫 第1部 第26篇〉
  • 室瀬和美、2002、『漆の文化: 受け継がれる日本の美』、角川書店 角川学芸出版
  • 松田権六、2001、『うるしの話』、岩波書店〈岩波文庫〉
  • 奈良国立博物館、2006、『平成十八年 正倉院展』、奈良国立博物館
  • 粟国恭子、2007、『沈金と堆錦技法の琉球漆器 : 朱漆鳳風牡丹文沈金東道盆と黒漆山水文堆錦総張文庫』、沖縄県立芸術大学〈沖縄県立芸術大学紀要〉

関連項目

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