国防省 (イギリス)
国防省 Ministry of Defence(MOD) | |
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国防省庁舎 | |
役職 | |
国防大臣 | ジョン・ヒーリー |
概要 | |
所在地 | ロンドン、ウェストミンスター地区ホワイトホール |
ウェブサイト | |
Official website |
国防省(こくぼうしょう、英語: Ministry of Defence, "MOD")は、イギリス(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)の行政機関であり、国防政策を統括しイギリス軍(イギリス海軍、イギリス空軍及びイギリス陸軍)を指揮する。
国防省の主要政策は、イギリスの本土及び海外領土を保持することである。冷戦が終結した1990年代以後の現在では、従来予想されていた短期通常戦争は予期されていない。大量破壊兵器の拡散やテロの防止などが主要課題として位置づけられている。
歴史
[編集]1920年代から1930年代にかけて、イギリス政府は第一次世界大戦の反省をふまえて、陸軍と海軍に加えて新設された空軍を統合した3軍を統括する司令部が必要であるとの認識を有していた。1921年に当時のデビッド・ロイド・ジョージ連立内閣によって一旦提案は破棄されたが、1923年には参謀本部委員会(Chiefs of Staff Committee)が設立されている。
1930年代には、アドルフ・ヒトラー率いるナチスが台頭するドイツ(ヴァイマル共和政→ナチス・ドイツ→連合軍軍政期→西ドイツおよびドイツ民主共和国/東ドイツ→ドイツ連邦共和国)の政治情勢を受けて軍備の増強と各軍の連携の緊密化が進められるようになり、スタンリー・ボールドウィンによって国防調整大臣(Minister for Coordination of Defence)が新たに設けられた。初代チャットフィールド男爵アーンリ・チャットフィールドが任命され、1940年のチェンバレン内閣の総辞職までその職を務めたが、チャットフィールドの政治的影響力は大きいものではなかったため、軍の統合も思うようには進まなかった。
チェンバレンの後任となったウィンストン・チャーチル首相(戦時挙国一致内閣)は、国防省(Minister of Defence)を設立し、参謀本部委員会の指揮および軍政を担当させた。大臣職は第二次世界大戦中を通してチャーチル自身が兼務し、戦後は1946年のクレメント・アトリー内閣(労働党政権)において導入された国防省法によって、正式に国防大臣は閣議の構成員として認められることになった。既存の3つの職であった陸軍大臣(Secretary of State for War) 、海軍大臣 (First Lord of the Admiralty)および空軍大臣(Secretary of State for Air)は、それぞれ陸海空軍の直接指揮をとる役所としては残されたが、閣議への参加は行わないことになった。
その後、1940年代から1950年代にかけて国防省の権限が次第に増加し、1959年には軍需省が国防省に吸収され、最終的には1964年に陸軍省(戦争省)、海軍省(海軍本部)および空軍省の3省庁が正式に廃止され、事実上は国防省に吸収・統合される形で現在に至っている[注 1]。
幹部
[編集]大臣
[編集]国防省の大臣(Minister)の一覧(閣内大臣は太字)[1][2]。
名称 | 肖像 | 役職 | 担当 |
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The Rt Hon. グラント・シャップス MP | 国防大臣(Secretary of State for Defence) | 国家安全保障会議のメンバーを含む戦略的運営と作戦戦略、国防計画、プログラム、資源配分、戦略的国際パートナーシップ、アメリカ合衆国・フランス・ドイツ・サウジアラビア・湾岸諸国、北大西洋条約機構(NATO)、核作戦、国防政策及び組織管理、戦略的コミュニケーション。 | |
The Rt Hon. ジェームズ・ヒーピー MP | 国軍閣外大臣(Minister of State for the Armed Forces) | 作戦、作戦上の法務政策、ブレグジット・ノーディール計画、戦力増強(演習を含む)、軍の採用と維持政策(正規軍と予備軍)、サイバー、常設統合運用基地、国際防衛関与戦略、アフリカおよびラテンアメリカにおける防衛関与の主導、人間の安全保障、作戦上の公的照会、審問、青少年および士官候補生、記念式典、式典任務、勲章認定、儀典政策、ケースワーク | |
ジェームズ・カートリッジ MP | 国防調達閣外大臣(Minister of State for Defence Procurement) | 装備計画の実施、原子力事業、防衛輸出、技術革新、Dstlを含む防衛科学技術、情報コンピュータ技術、単一情報源規制局(SSRO)、DIOの施設及び投資、環境及び持続可能性(サステナビリティ) | |
The Rt Hon. ミントー伯爵 | 国防担当閣外大臣(Minister of State for Defence) | 改革プログラムを含むコーポレート・ガバナンス、単一部局計画、リスク報告、安全衛生、ブレグジットを含む対EU関係(ノーディール計画を除く)、引退した国防省幹部や幅広いオピニオン形成者とのエンゲージメント、戦略的輸出許可や化学・生物兵器を含む軍備管理・核拡散対策; 英国水路部(海軍水路部)、法定文書プログラム、オーストラリア・アジア・極東防衛業務、国防消防救助、安全保障、スコットランド・ウェールズ・北アイルランドの権限移譲当局、難破船、博物館、遺産、国防省警察(MoD Police)、閣僚間の連絡業務、PQs対応 | |
The Rt Hon. アンドリュー・ムリソン MP | 国防関係者・家族担当政務次官(Parliamentary Under-Secretary of State for Defence People and Families) | 文民(シビリアン)・軍人(サービス・パーソネル)政策、軍関係者の給与・年金・補償、軍規、軍人家族の福祉、地域社会への関与、平等・多様性・包摂(インクルージョン)、精神衛生、国防医療サービス、人材プログラム、軍属者家族の宿泊政策と福祉 |
上級将校
[編集]参謀総長
[編集]- 国防参謀総長 – サー・トニー・ラダキン海軍大将
- 国防参謀次長 – General Gwyn Jenkins
- 第一海軍卿兼海軍参謀総長 – Admiral Sir Ben Key(王立海軍のトップ)
- 陸軍参謀総長 – General Sir Patrick Sanders(英国陸軍のトップ)
- 空軍参謀総長 – Air Chief Marshal Sir Richard Knighton(王立空軍のトップ)
- 戦略コマンド司令官 – General Sir James Hockenhull(戦略コマンドのトップ)
その他
[編集]その他の要職で、OF-8以上の上級将校が就任するもの[4]。
- Chief of Defence People – Vice Admiral Phillip Hally
- Deputy Chief of Defence Staff (Military Strategy and Operations) – Lieutenant General Roland Walker
- Deputy Chief of Defence Staff (Financial and Military Capability) – Lieutenant General Sir Robert Magowan RM
- Chief of Joint Operations – Lieutenant General Charles Stickland, based at Northwood Headquarters
- Defence Senior Adviser Middle East – Air Marshal Martin Sampson
- Chief of Defence Intelligence – Adrian Bird
- Director-General of the Defence Safety Authority – Air Marshal Stephen Shell
組織
[編集]Top level budgets
[編集]- Navy Command - 王立海軍
- Army Command - 英国陸軍
- Air Command - 王立空軍
- 戦略コマンド(Strategic Command)
- Defence Nuclear Organisation
- Defence Infrastructure Organisation
Bespoke trading entity
[編集]- Defence Equipment and Support (DE&S)
- Defence Electronics and Components Agency (DECA)
- Defence Science and Technology Laboratory (Dstl)
- 英国水路部(UKHO) – also has trading fund status.
- Submarine Delivery Agency (SDA)
Executive non-departmental public bodies
[編集]- 国立王立海軍博物館(National Museum of the Royal Navy)
- 国立陸軍博物館(National Army Museum)
- 王立空軍博物館(Royal Air Force Museum)
- Single Source Regulations Office (SSRO)
Advisory non-departmental public bodies
[編集]- Advisory Committee on Conscientious Objectors
- Advisory Group on Military Medicine
- Armed Forces Pay Review Body
- Defence Nuclear Safety Committee
- Independent Medical Expert Group
- National Employer Advisory Board
- Nuclear Research Advisory Council
- Scientific Advisory Committee on the Medical Implications of Less-Lethal Weapons
- Veterans Advisory and Pensions Committees
Ad-hoc advisory group
[編集]- Central Advisory Committee on Compensation
その他の機関
[編集]- Commonwealth War Graves Commission
- Defence Academy of the United Kingdom
- Defence Sixth Form College
- Defence and Security Media Advisory Committee
- 艦隊航空隊博物館(Fleet Air Arm Museum)
- Independent Monitoring Board for the Military Corrective Training Centre (Colchester)
- Reserve Forces' and Cadets' Associations
- チェルシー王立病院(Royal Hospital Chelsea)
- 王立海兵隊博物館(Royal Marines Museum)
- 王立海軍潜水艦博物館(Royal Navy Submarine Museum)
- Service Complaints Ombudsman
- Service Prosecuting Authority
- United Kingdom Reserve Forces Association
資産
[編集]国防省はイギリスの政府機関の中でも最も不動産を所有している組織の一つである。イギリス国内に訓練場、弾薬保管施設、兵舎などに利用されている不動産を有している。2005年の監査局のレポートによると、国防省は153億ポンドの不動産を所有しており、総面積は2400平方km (927平方マイル) におよび、これはイギリス全土陸地面積の1%弱にもあたる。
ロンドン中心部のメイン・ビルディングにおいては、ホワイトホール宮殿内において1514年から1516年にかけて建設されたヘンリー8世のワイン・セラーが国防省建物内の地下の一部として利用されている。これは1957年にヴィンセント・ハリスの設計で現在の国防省建物を建設した際に従来あったワイン・セラーを5.7メートル下へと移動させ、保存したものである。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ “Her Majesty's Official Opposition” (英語). UK Parliament. 2017年10月17日閲覧。
- ^ “Our ministers”. GOV.UK. Ministry of Defence. 12 May 2015閲覧。
- ^ “Ministry of Defence - Our senior military officials”. GOV.UK. Ministry of Defence. 23 July 2018閲覧。
- ^ “Organogram - Ministry of Defence” (英語). data.gov.uk (31 March 2016). 8 August 2017時点のオリジナルよりアーカイブ。18 December 2017閲覧。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 公式ウェブサイト
- Ministry of Defence 🇬🇧 (@DefenceHQ) - X(旧Twitter)