荒子川
荒子川 | |
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フェニックスブリッジから望む荒子川 (2022年(令和4年)5月) | |
種別 | 普通河川 |
延長 | 6.7 km |
流域面積 | 6.5 km2 |
河口・合流先 | 名古屋港 |
流路 | 名古屋市中川区・港区 |
流域 | 名古屋市 |
荒子川(あらこがわ)は、愛知県名古屋市中川区・港区を流れる普通河川。河川延長6.7キロメートル[1]、流域面積6.5平方キロメートル。
概要
[編集]中川区八田町の八田公園付近から発して中川区と港区を流下[1]、港区十一屋にある荒子川ポンプ所によって名古屋港に強制排水される[1]。かつては愛知郡中村大字稲葉地(現・中村区)[2]、あるいは枇杷島村(現・西区)・日比津村(現・中村区)周辺の悪水を源としていた悪水路で[3] 、上流部は柳瀬川(やなせがわ)と呼ばれ、荒子村以南を荒子川と呼んだ[2]。現在では柳瀬川の区間は暗渠化されている[1]。
なお、江戸時代の地誌『郡村徇行記』には、稲葉地村で庄内用水の西井筋を伏せ越しによって通していたとの記述があるという[3]。
荒子川運河
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荒子川河口付近の空中写真(1959年11月) 北に向かって開削された水路と複数の横堀。 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービス |
1922年(大正11年)、名古屋市によって堀川や中川、山崎川や大江川とともに運河とする都市計画が策定され[4]、中川運河開削事業については1924年(大正13年)6月9日に内閣の認可を受けた[4][5]。中川運河は1926年(大正15年)に起工して1930年(昭和5年)に竣工している。「荒子川運河」については河口から900メートル部分より真北に開削し、八熊通に沿って東進、中川運河と結ぶ計画であったが[4]、運河開削に関する市長の諮問に名古屋市会での同意を得られず[5]、計画は進まなかった。
1953年(昭和28年)、幅員60メートルでJR関西本線 八田駅まで延伸した上で終点に57,000平方メートルの船溜りを設けるとともに、合わせて港区当知町から幅員80メートルの支線を西に開削して庄内川と結ぶとする都市計画変更が行なわれ、翌年に都市計画事業決定がなされた[6]。1955年(昭和30年)、中川運河との接続計画について名古屋港管理組合が事業着手[6]。翌年3月には名古屋市が運河を含めた939.8ヘクタールについて都市計画決定を行ない、1959年(昭和34年)3月に荒子川南部土地区画整理事業が、1962年(昭和37年)3月に小碓土地区画整理事業が着手された[6]。
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荒子川河口付近の空中写真(1970年5月) 北への水路の大半が埋め戻されている。 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービス |
しかし昭和37年度には都市計画の再検討が始まり、工業地帯とする計画であった運河周辺の宅地化や公害問題、水運から陸運への輸送手段の変化(モータリゼーションの進行)などを鑑みて、1965年(昭和40年)8月には庄内川連絡運河以北〜八田駅までの運河計画が廃止されて、交点に6.5ヘクタールの船溜りを建設する計画に変更[4]。さらに1967年(昭和42年)9月には庄内川との連絡運河計画も廃止された[6]。1979年(昭和54年)、中川運河との接続部分(横堀)について「中川運河の支線」に変更され「荒子川運河」は計画廃止となった[6]。現在、荒子川運河の名は支線部分(1.3キロメートル)にのみ残る[7]。
環境
[編集]戦後、流域の都市化が進んだことから流量が減少。さらに昭和30年代以降、流域での地下水汲み上げによる地盤沈下が進んで自然排水困難となったこともあって水の滞留を原因とするアオコなど植物プランクトンの大量増殖による水質汚染が度々発生した[8]。昭和40年代以降は下水道の整備に伴って護岸の改善などが進められ、河口へのポンプ所設置や、荒子川公園の整備(1984年供用開始)も行なわれるなどしている[9]。
現在の主な水源は1990年(平成2年)に導入された名古屋市上下水道局・打出水処理センターの処理水(10,000立方メートル/日)と[10]、中村区にある三菱重工業および三菱化学からの工場排水(冷却水)。また、1989年(平成元年)から庄内用水の余剰水を「水質保全導水路」を経由して直接導水している。これらの結果、水質は若干改善された。なお、4月から9月の灌漑期には庄内用水から20,000立方メートル/日の流入がある[11]。
近年、外来魚であるナイルティラピアの異常繁殖が問題となっているが[12]、これは処理水や工場排水の水温が高いためであるという[13]。
また、2016年(平成28年)度には、近隣の埋立廃棄物からの溶出により環境基準値を超える濃度のジクロロエタンが検出された。 [14]。
河川施設
[編集]- 荒子川ポンプ所 - 高度成長期における地下水の汲み上げ増加による地盤沈下により自然排水が難しくなったため、河口部にポンプ所を設置して強制排水している。ポンプ6台を設置しており、総排水能力は毎分3,538立方メートル[15]。
脚注
[編集]- ^ a b c d “その他の河川など(暮らしの情報)”. 名古屋市 (2011年4月1日). 2013年11月24日閲覧。
- ^ a b 地理編、pp.794 - 795
- ^ a b 中川区史、pp.76
- ^ a b c d 名古屋都市計画史、pp.102 - 105
- ^ a b “これからの中川運河のあり方” (PDF). 名古屋商工会議所 (2009年2月13日). 2013年11月26日閲覧。
- ^ a b c d e 名古屋都市計画史、pp.414 - 415
- ^ “第2章 中川運河の概要” (PDF). 名古屋港管理組合 (2012年10月22日). 2013年11月24日閲覧。
- ^ “蘇る水百選 愛知県名古屋市:心やすらぐ水のせせらぎ・荒子川”. 国土交通省 (2004年3月3日). 2013年11月24日閲覧。
- ^ “中川運河再生計画 資料編” (PDF). 名古屋港管理組合 (2012年10月22日). 2013年11月24日閲覧。
- ^ “水の環復活2050なごや戦略進捗状況確認票” (PDF). 名古屋市 (2013年3月29日). 2013年11月24日閲覧。
- ^ 安藤良、長谷川絵理 (2012年4月2日). “荒子川の水質特性とその河口水域の水質汚濁機構について” (PDF). 名古屋市. 2013年11月24日閲覧。
- ^ “UP! PICK UP「 なぜ?名古屋の川に“ティラピア”大繁殖」”. 名古屋テレビ (2010年3月26日). 2013年11月24日閲覧。
- ^ “荒子川のテラピアはなぜ越冬できるのか?” (PDF). 中部青年技術士会 (2011年4月4日). 2013年11月24日閲覧。
- ^ “平成28年度健康項目環境基準値超過地点一覧” (PDF). 2021年8月23日閲覧。
- ^ “荒子川ポンプ所運転状況”. 名古屋市上下水道局. 2020年3月6日閲覧。
参考文献
[編集]- 『名古屋市史 地理編』名古屋市、1916年
- 中川区制施行50周年記念誌編集委員会『中川区史』中川区制施行50周年事業実行委員会、1987年
- 名古屋都市センター・名古屋市計画局『名古屋都市計画史』名古屋都市センター、1999年