菊綴

『水干』白色と緑色の菊綴
『直垂』袖、脇、袴に付いている、「∝」マークに見える白色の組紐が菊綴結となる

菊綴(きくとじ)とは、水干・水干袴や鎧直垂・鎧直垂袴などの縫い合わせ箇所に付けられた総(ふさ)飾り。

通常の直垂は菊綴の飾り部分を総状にせず結び留めることから、「結び菊綴・菊綴結(きくとじむすび)」あるいは「もの字」と呼ぶが[1][2]、これらも纏めて「菊綴」と呼ぶ場合が多い。

また、相撲の行司の直垂では、菊綴の総の色によって階級分けされている。

概要

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付属用途

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本来は飾りではなく、縫い合わせの綻びを防止・補強する目的で、組紐を縫い目上の要所要所に通して結んだものであった。残りの紐部分を解きほぐした有様(ポンポン状)が、菊の花に似ていたため、「菊綴」と呼ばれた[3]

時代が下がると本来の役割・実用性の意味は薄まっていき、絹糸を円状にした総を付けるなど、形式的に装飾として付けるようになる[2]

菊綴結

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「も」の字形に似ている形である。通常の直垂と大紋直垂の組紐を用いたが、素襖直垂は細い皮製紐を用いた[2]

付属箇所・数

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菊花・総状の菊綴

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水干
  • 前:中央上方。後:胴と左右両袖の堺となる裂目、左右両袖の中間裂目[3]
  • 5箇所全て縦並びに2個ずつ設ける。
水干袴
  • 左右脇、股立(ももだち)の部分。前:左右太物の上部分。4箇所全て縦並びに2個ずつ設ける[2]
鎧直垂
  • 前:衿部分に付ける場合が多いが、様式・数は様々である。後:背面上方の中央裂目、胴と左右両袖の堺となる裂目、左右両袖の中間裂目[3]
  • 後面、5箇所全て縦並びに2個ずつ設ける。
鎧直垂袴
  • 水干袴と同じである[3]

菊綴結の菊綴

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直垂
  • 前:胴と左右両袖の堺となる裂目。後:背面上方の中央裂目、左右両袖の中間裂目[4]
  • 5箇所全てに1個ずつ設ける。
直垂袴
  • 箇所は水干袴と同じであるが、1個ずつ設ける[2]

脚注

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  1. ^ 新村出 『広辞苑』 1983年 岩波書店
  2. ^ a b c d e 高田倭男 『服装の歴史』 2005年 中公文庫
  3. ^ a b c d 歴世服装美術研究会 (編集代表者:鈴木敬三) 『日本の服装(上)』 1964年  吉川弘文館
  4. ^ 鈴木敬三 『有識故実図典 服装と故実』 1995年 吉川弘文館