内田康夫
誕生 | 1934年11月15日 東京都北区 |
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死没 | 2018年3月13日(83歳没)[1] 東京都 |
職業 | 推理作家 |
国籍 | 日本 |
活動期間 | 1980年 - 2018年 |
ジャンル | 推理小説 |
代表作 | 『浅見光彦シリーズ』 |
デビュー作 | 『死者の木霊』 |
配偶者 | 早坂真紀 |
ウィキポータル 文学 |
1934年11月15日 - 2018年3月13日[1])は、日本の推理作家。西村京太郎、山村美紗とともに、旅情ミステリー作家の代表的人物として知られる。代表作(シリーズ)に『浅見光彦』(「浅見光彦シリーズ」も参照)、『岡部警部』(「岡部警部シリーズ」も参照)、『竹村岩男』(テレビドラマ版は『信濃のコロンボ』参照)など。
(うちだ やすお、特に『浅見光彦シリーズ』は、テレビ会社各局の2時間ドラマ帯にて長期シリーズを獲得するなど人気を博しており、その中の一作『天河伝説殺人事件』は映画にもなった。後述における「初期三作」のうち、商業デビュー作とされる第三作『後鳥羽伝説殺人事件』は『浅見光彦』シリーズの第一作でもある。
発表した作品の累計発行部数は1億部を超える[2]。
来歴
[編集]父は長野県長野市出身の医師[3]。実家が戦災に遭い長野市を皮切りに戸隠山麓の村、秋田県羽後町、雄勝町、埼玉県、静岡県沼津市などを転々[3]。 戦中は秋田県秋の宮(現湯沢市、旧雄勝町)に疎開していた。(後述の鬼首殺人事件はこの地区を題材にしたものである。また同時期に同地区に武者小路実篤が疎開していた。)
埼玉県立川越高等学校卒業、東洋大学文学部国文学科中退。日本テレビジョン、一光社でCMアニメの制作スタッフとして働く[4]。のちコピーライター、CM製作会社の社長を経験。趣味は囲碁で、2008年に第2回「文人碁会」で優勝している。将棋も愛好しており、羽生善治が対戦した時の棋譜をよくリクエストされたことを、将棋雑誌の編集部に当時勤めていた大崎善生が回想している[5]。
1980年に第一作『死者の木霊』を、翌年1981年に第二作『本因坊殺人事件』を栄光出版社よりそれぞれ自費出版した。この初期2作のうち『死者の木霊』が朝日新聞1981年3月8日朝刊の読書欄にて紹介されて話題となり、第三作となる『後鳥羽伝説殺人事件』が1982年、廣済堂出版より発刊されて商業ベースのデビュー作となる。
その後、初期2作は別の出版社に買い上げられた。『死者の木霊』は1983年に講談社文庫より『本因坊殺人事件』は1984年にエイコー・ノベルズより出版されており、その後に各出版社(集英社、角川書店など)が発刊を手がけている。ただし出版社が書籍に附す通常のプロフィールにおいては「執筆第一作でありメディアにおいて最初に取り上げられた作品」と言う意味で『死者の木霊』をデビュー作として置いている。作家として軌道に乗った後は「浅見光彦シリーズ」ほか膨大な数の小説を執筆し、長野県軽井沢町に居を構え、夫婦で豪華客船の旅に出るなど、悠々自適の生活を送る。また、軽井沢町発地にある「Tea Salon 軽井沢の芽衣」のオーナーでもある[6]。
2015年7月26日、軽度の脳梗塞が見つかり入院。その際に毎日新聞で連載していたシリーズの114作目となる浅見光彦シリーズ作「孤道」は2015年8月12日で終了した。この時点では後日に書き下ろしとして刊行する予定[7]であったが、2017年3月、以前のような執筆活動が難しくなったという理由により、作家活動を正式に休止(休筆宣言)。「孤道」については5月に連載分をまとめ、毎日新聞出版で刊行。物語の結末部分については一般公募を行ない、最優秀作が出た場合は、その作品を「完結編」として刊行するとした[8][9][注釈 1]。
2015年11月に 一般財団法人内田康夫財団が設立され、2016年4月には軽井沢町長倉に浅見光彦記念館が開館した[11]。
2018年3月13日、敗血症のため東京都内で逝去。83歳だった[1]。同年12月18日に3月13日の命日の文学忌を「野想忌(やそうき)」することが発表された。[12]
作品リスト
[編集]後ろの括弧内は執筆順である。また中には内田作品に登場する探偵の『競演もの』が多数存在する。
浅見光彦シリーズ
[編集]- 後鳥羽伝説殺人事件 (3)
- 平家伝説殺人事件 (5)
- 赤い雲伝説殺人事件 (9)
- 津和野殺人事件 (13)
- 佐渡伝説殺人事件 (16)
- 白鳥殺人事件 (18)
- 天城峠殺人事件 (20)
- 小樽殺人事件 (22)
- 高千穂伝説殺人事件 (23)
- 「首の女」殺人事件 (25)
- 漂泊の楽人 (27)
- 鏡の女 (28)
- 短編集(収録作「鏡の女」「地下鉄の鏡」「透明な鏡」)
- 美濃路殺人事件 (30)
- 長崎殺人事件 (31)
- 終幕(フィナーレ)のない殺人 (33)
- 竹人形殺人事件 (35)
- 軽井沢殺人事件 (36) ※信濃のコロンボシリーズとのクロスオーバー作品
- 佐用姫伝説殺人事件 (37)
- 恐山殺人事件 (38)
- 日光殺人事件 (39)
- 天河伝説殺人事件[上・下巻] (40)
- 鞆の浦殺人事件 (41)
- 志摩半島殺人事件 (42)
- 津軽殺人事件 (43)
- 江田島殺人事件 (44)
- 隠岐伝説殺人事件[上・下巻/上下合本あり] (46)
- 城崎殺人事件 (48)
- 隅田川殺人事件 (50)
- 横浜殺人事件 (51)
- 金沢殺人事件 (52)
- 讃岐路殺人事件 (53)
- 日蓮伝説殺人事件[上・下巻/上下合本あり] (54)
- 琥珀の道(アンパーロード)殺人事件 (55)
- 菊池伝説殺人事件 (56)
- 神戸殺人事件 (58)
- 琵琶湖周航殺人歌 (59)
- 御堂筋殺人事件 (60)
- 歌枕殺人事件 (61)
- 伊香保殺人事件 (62)
- 平城山(ならやま)を越えた女 (63)
- 「紅藍(くれない)の女(ひと)」殺人事件 (64)
- 耳なし芳一からの手紙 (65)
- 三州吉良殺人事件 (66)
- 上野谷中殺人事件 (67)
- 鳥取雛送り殺人事件 (68)
- 浅見光彦殺人事件 (69)
- 博多殺人事件 (70)
- 喪われた道 (71)
- 鐘 (72)
- 「紫の女」殺人事件 (73)
- 薔薇の殺人 (74)
- 熊野古道殺人事件 (75)
- 若狭殺人事件 (76)
- 風葬の城 (77)
- 朝日殺人事件 (78)
- 透明な遺書 (80)
- 坊っちゃん殺人事件 (81)
- 「須磨明石」殺人事件 (82)
- 斎王の葬列 (84)
- 鬼首(おにこうべ)殺人事件 (86)
- 箱庭 (88)
- 怪談の道 (89)
- 歌わない笛(90)
- 幸福の手紙(91)
- 沃野の伝説[上・下巻] (93) ※信濃のコロンボシリーズとのクロスオーバー作品
- 札幌殺人事件[上・下巻] (94)
- 軽井沢通信
- イーハトーブの幽霊 (97)
- 記憶の中の殺人 (99)
- 華の下にて (100)
- 蜃気楼 (101)
- 姫島殺人事件 (102)
- 崇徳伝説殺人事件 (104)
- 皇女の霊柩 (106)
- 遺骨 (107)
- 鄙の記憶 (109)
- 藍色回廊殺人事件 (112)
- はちまん[上・下巻] (114)
- 黄金の石橋 (115)
- 氷雪の殺人 (117)
- ユタが愛した探偵 (119)
- 秋田殺人事件 (123)
- 貴賓室の怪人「飛鳥」編 (124)
- 不知火海 (125)
- 鯨の哭く海 (126)
- 箸墓幻想 (127)
- 中央構造帯 (128)
- しまなみ幻想 (129)
- 贄門島[上・下巻] (130)
- 化生の海 (133)
- 十三の冥府 (134)
- イタリア幻想曲 貴賓室の怪人II (135) ※貴賓室の怪人「飛鳥」編の続編
- 他殺の効用 内田康夫ミステリー・ワールド (136)
- 短編集(収録作「他殺の効用」「乗せなかった乗客」「透明な鏡」「ナイスショットは永遠に」「愛するあまり」)
- 上海迷宮 (137)
- 風の盆幻想 (138)
- 逃げろ光彦
- 悪魔の種子 (140)
- 棄霊島[上・下巻]
- 浅見光彦シリーズ第百作
- 還らざる道
- 長野殺人事件 ※信濃のコロンボシリーズとのクロスオーバー作品
- 幻香
- 壺霊
- 砂冥宮
- ぼくが探偵だった夏 ※信濃のコロンボシリーズとのクロスオーバー作品
- 教室の亡霊
- 神苦楽島[上・下巻]
- 不等辺三角形
- 風のなかの櫻香
- 黄泉から来た女
- 汚れちまった道
- 萩殺人事件
- 北の街物語
- 遺譜 浅見光彦最後の事件[上・下巻][13]
- 孤道 ※絶筆
- 孤道 完結編 金色(こんじき)の眠り(原案:和久井清水(女性作家)作)
浅見光彦シリーズ 紀行文・随筆
[編集]- 浅見光彦のミステリー紀行
- 浅見光彦のミステリー紀行 第1集 (79)
- 浅見光彦のミステリー紀行 第2集 (85)
- 浅見光彦のミステリー紀行 第3集 (87)
- 浅見光彦のミステリー紀行 第4集 (92)
- 浅見光彦のミステリー紀行 番外編1 (95)
- 浅見光彦のミステリー紀行 第5集 (98)
- 浅見光彦のミステリー紀行 番外編2 (103)
- 浅見光彦のミステリー紀行 第6集 (111)
- 浅見光彦のミステリー紀行 第7集 (118)
- 浅見光彦のミステリー紀行 第8集 (128)
- 軽井沢通信 浅見光彦からの手紙 (96)
- 全面自供 浅見光彦と内田康夫 いいたい放題 (110)
- ふりむけば飛鳥 浅見光彦世界一周船の旅 (113)
- 浅見光彦を追え ミステリアス信州 (116)
- 名探偵浅見光彦の食いしん坊紀行 (120)
- 極秘調査ファイルシリーズ(内田康夫監修 / 浅見光彦倶楽部編著)
- 極秘調査ファイル1 浅見光彦の秘密 (121)
- 極秘調査ファイル2 浅見光彦の真実 (122)
- 浅見光彦の日本不思議舞台地の旅(エッセイ集)
信濃のコロンボシリーズ
[編集]- 死者の木霊(1) ※岡部警部も登場
- 戸隠伝説殺人事件 (7)
- 「信濃の国」殺人事件 (19)
- 北国街道殺人事件 (34)
- 追分殺人事件 (45)
岡部警部シリーズ
[編集]フルムーン探偵シリーズ
[編集]- 湯布院殺人事件 (49)
- 釧路湿原殺人事件 (57)
その他
[編集]ミステリー
[編集]- 本因坊殺人事件 (2)
- 遠野殺人事件 (6)
- 夏泊殺人岬 (10)
- 明日香の皇子 (15)
- 杜の都殺人事件 (21)
- 王将たちの謝肉祭 (24)
- 少女像(ブロンズ)は泣かなかった (47)
- 存在証明 (108)
- Escape 消えた美食家 (131)
短編集
[編集]- 盲目のピアニスト (26)
- 軽井沢の霧の中で (29)
- パソコン探偵の名推理 (14)
- 死線上のアリア (83)
- 再録短編集
- 龍神の女 内田康夫と5人の名探偵 (132)
- 浅見光彦と七人の探偵たち
ファンタジーロマン
[編集]- 靖国への帰還
随筆など
[編集]- 我流ミステリーの美学 内田康夫自作解説第1集 (105)
- 歌枕かるいざわ (129)
オーディオブック
[編集]劇中人物としての内田康夫
[編集]内田康夫は自作の小説の中に「小説家・内田康夫」なるキャラクターを登場させている。プロフィールは作者である内田康夫のものに準ずる。小説内において『軽井沢のセンセ』という愛称で呼ばれており、交友範囲も広い。
主に『浅見光彦シリーズ』に登場し、浅見から事件のレポートを受け取りそれを小説にするという役柄を持つ(ただしめったに事件に首を突っ込まないし、浅見のために何かをするわけでもない。いわゆる「ワトソン役」ではなく、『怪盗アルセーヌ・ルパン』におけるモーリス・ルブランに近い)。「内田康夫」は浅見からすれば厄介事を持ってくる張本人の一人であり敬遠したい相手と設定されている。
内田本人が本人役として出演したことがあるほか、2008年のフジテレビ版浅見光彦シリーズでは伊東四朗が演じている[14]。令和版の岩田主演版にはフジテレビ版の初代浅見光彦を演じた榎木孝明が演じている。ゲームでの内田役の声は小川真司が務めた。
映像化された作品
[編集]テレビドラマ
[編集]- 日本テレビ
- TBS
- フジテレビ
- テレビ朝日
- 『土曜ワイド劇場』
- 内田康夫サスペンス・福原警部 主演:石塚英彦 製作:テレビ朝日、東阪企画
- 小樽殺人事件 主演:篠田三郎 製作:テレビ朝日
- 『土曜ワイド劇場』
- テレビ東京
- 『水曜女と愛とミステリー』⇒『水曜ミステリー9』⇒『水曜シアター9』
- 信濃のコロンボ事件ファイル 主演:中村梅雀 製作:テレビ東京、BSジャパン、G・カンパニー
- 『水曜女と愛とミステリー』
- 『水曜ミステリー9』
- 『月曜プレミア8』
- 『水曜女と愛とミステリー』⇒『水曜ミステリー9』⇒『水曜シアター9』
映画
[編集]出演
[編集]テレビドラマ
[編集]- 月曜ドラマスペシャル・浅見光彦シリーズ1
- 『高千穂伝説殺人事件』(1994年4月25日、TBS) 本人役
- 金曜エンタテイメント・浅見光彦シリーズ4
- 『津和野殺人事件』(1997年7月25日、フジテレビ)
- 金曜エンタテイメント・浅見光彦シリーズ7
- 『恐山殺人事件』(1998年11月20日、フジテレビ)
- 金曜エンタテイメント・浅見光彦シリーズ 14
- 『黄金の石橋』(2002年4月12日、フジテレビ) 本人役
- 金曜プレステージ・浅見光彦シリーズ29
- 『熊野古道殺人事件』(2008年1月18日、フジテレビ)
- 金曜プレステージ・浅見光彦シリーズ30
- 『天河伝説殺人事件』(2008年1月25日、フジテレビ)
バラエティ
[編集]- ぴったんこカン・カン(2009年10月16日、TBS) - VTRゲスト出演
歴史・紀行
[編集]ドラマCD
[編集]- 浅見光彦シリーズ - ナレーション
- 浅見光彦シリーズ「後鳥羽伝説殺人事件」(2010年9月23日、フロンティアワークス)
- 浅見光彦シリーズ「天河伝説殺人事件」(2010年11月24日、フロンティアワークス)
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ a b c “訃報:内田康夫さん83歳=作家、浅見光彦シリーズ”. 毎日新聞. (2018年3月18日) 2018年3月18日閲覧。
- ^ “作家の内田康夫さん死去 「浅見光彦シリーズ」”. 日本経済新聞 (2018年3月18日). 2019年12月21日閲覧。
- ^ a b 『私の父、私の母』中央公論社、1994年、38-42頁
- ^ 津堅信之『テレビアニメ夜明け前 知られざる関西圏アニメーション興亡史』(ナカニシヤ出版)P.80
- ^ 【喪友記】内田康夫さんを悼む 愛棋家のセンセ(大崎善生)『日本経済新聞』朝刊2018年3月23日(文化面)
- ^ Hondadogおでかけ情報ホンダ公式サイト
- ^ “内田康夫さん 軽い脳梗塞で入院 毎日新聞の連載終了へ”. スポニチ (2015年8月6日). 2015年8月6日閲覧。
- ^ “内田康夫さんが休筆宣言 未完の小説、完結編は公募で”. asahi.com. 2017年3月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年3月21日閲覧。
- ^ “内田康夫、休筆宣言!未完の浅見光彦シリーズ最新作『孤道』の〈完結編〉を公募”. ほんのひきだし. asahi.com (2017年3月21日). 2017年3月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。 Template:Cite webの呼び出しエラー:引数 accessdate は必須です。
- ^ “小説「孤道」未完+完結編、きょう同時刊行。故・内田康夫さんの遺志継ぎ”. 毎日新聞デジタル (2019年3月15日). 2023年8月6日閲覧。
- ^ 浅見光彦記念館 一般財団法人内田康夫財団
- ^ お知らせ【浅見光彦記念館】内田康夫「文学忌」の名称決定2018年12月18日、2023年12月2日閲覧
- ^ 内田康夫(インタビュー)「“永遠の33歳”が34歳になった時、探偵生命をかけた謎の扉が開き出す【内田康夫インタビュー】」『ダ・ヴィンチニュース』、2014年8月6日 。2016年5月10日閲覧。
- ^ その作品では内田自身も別役として出演している。
- ^ “伊藤淳史×中村梅雀 新旧コロンボが強力タッグ!“信濃のコロンボ”新シリーズ誕生!/新・信濃のコロンボ 追分殺人事件”. テレ東からのお知らせ (2020年4月18日). 2020年4月21日閲覧。