自宅警備員
自宅警備員(じたくけいびいん)とは、引きこもりやニート[1][2][3][4]が自宅に(誰とも関わらずに)ずっと居ること[2][3]を意味する日本のインターネットスラングである。
発祥
[編集]発祥時期等は明確ではないが、2000年代後半には存在していたとみられ[注釈 1]、2ちゃんねるなどの電子掲示板から発祥したとされている[3][5]。2007年12月14日に未来検索ブラジルによって開催された「ネット流行語大賞」では7位にランクインした[6]。
定職を持たずに自宅にとどまることを、「自宅の常駐警備」という社会に役立つ活動であるとユーモラスに読み替えたものである[1][3][5]。作家の堀田純司は、インターネットの発達によって、従来ならばつながりを持つことのなかった引きこもりと呼ばれる人々が、ネット社会に常駐しコミュニケーションを持つことで、自虐的なユーモアを伴った「自称」が生まれたのではないかと述べている[5]。他には、「ホームガーディアン(自宅警備員の直訳?)」「一級在宅士(一級建築士)」「代表戸締役社長(代表取締役社長)」「職務放棄員」「閉鎖空間の神人」「内交官(外交官)」などを名乗っている人もいるという[7]。また、実際に病気や引きこもり等の問題があるわけではなく、単に「自宅で誰とも関わらずにいた」という意味で使用される場合もあるとされている[2]。
自宅警備員の「任務」として、自宅の警備に加えてインターネットの検閲や維持、コンビニエンスストアまでの道のりのパトロールなどがあり、日勤より夜勤を選ぶ者が多い、過酷な勤務であるにもかかわらず賃金が低い、などとして語られることがある[8]。
使用例
[編集]実業家の平松庚三は、2008年にライブドアホールディングス代表取締役社長を退任後のインタビューで「自宅警備員に転職した」と述べ、さらに「自宅警備も楽ではない。愛犬も散歩させなくてはならないし、『マリオカート』のタイムアタックも新記録を出さなくてはならない。でっていう!」と答えていた[9]。
2013年には一般のニュースメディアにおいても、「引きこもり」を「自宅警備員」と比喩する文章が掲載されている[10]。
「自宅警備を行う人々が集まっている」という名目の自宅警備隊 N.E.E.T.というサークルも存在しており[11]、SWATを意識したコスプレでイベントに参加するなどしている。
また、「自宅警備員」という言葉が上述のような意味で用いられる以前に、日本国外において治安が悪い一般人の自宅を警備するべく雇用した人間を「自宅警備員」と呼称して報道した前例がある[12]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ ウィキペディアのパロディサイトであるアンサイクロペディア日本語版において「自宅警備員」の記事が立項されたのは2007年1月7日 [1]である。
出典
[編集]- ^ a b “自宅警備員” (日本語). コトバンク『知恵蔵mini』. 朝日新聞社 (2013年6月3日). 2016年5月29日閲覧。
- ^ a b c 小林恵士 (2012年6月15日). “若者言葉で『田植え』とは 椙山女学園大・加藤ゼミ(Myキャンパス)” (日本語). 朝日新聞(朝刊、教育1) (朝日新聞社): p. 21 2016年5月29日閲覧。 - 元記事は聞蔵IIビジュアルにて2013年6月19日閲覧。
- ^ a b c d 唐沢よしこ (2008年2月18日). “自宅警備員「じたくけいびいん」(モニ太のデジタル辞典)” (日本語). 読売新聞 (読売新聞東京本社). オリジナルの2013年9月15日時点におけるアーカイブ。 2016年5月29日閲覧。
- ^ (日本語)『現代用語の基礎知識2014年版』自由国民社、2014年、1179頁。ISBN 978-4426101329。
- ^ a b c 堀田純司 (2012年11月19日). “「自宅警備員」を自称するということ” (日本語). 東洋経済オンライン. 東洋経済新報社. 2016年5月29日閲覧。 - 初出は『週刊東洋経済』2012年11月17日号。この文章が載った堀田の連載コラムは「夜明けの自宅警備日誌」というタイトルがつけられている。
- ^ “ネット流行語大賞に「アサヒる」” (日本語). ITmediaニュース. アイティメディア (2007年12月14日). 2016年5月29日閲覧。
- ^ 池上正樹『大人のひきこもり 本当は「外に出る理由」を探している人たち』講談社現代新書、2014年、76p
- ^ コジマリョウヘイ (2007年12月28日). “トレンディネットが厳選&解説 〜はてなダイアリーキーワード発〜 2008年注目の現代用語10” (日本語). 日経トレンディネット. 日経BP. p. 6. 2008年1月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年10月23日閲覧。
- ^ ささきなつみ (2008年2月8日). “元ライブドア社長・平松庚三が警備員に転職”. ロケットニュース24. ソシオコーポレーション. 2011年12月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年10月18日閲覧。
- ^ 池上正樹 (2013年4月11日). “ハローワークで就職できるのは3割未満!?長期失業中の中高年が“自宅警備員”になるまで(『引きこもり』するオトナたち)” (日本語). ダイヤモンド・オンライン. ダイヤモンド社. 2016年5月29日閲覧。
- ^ “コスプレ武装集団「自宅警備隊 N.E.E.T.」を竿尾悟が描く” (日本語). コミックナタリー. ナターシャ (2013年7月30日). 2016年5月29日閲覧。
- ^ “自宅警備員に誘拐される 比の邦人救出、容疑者射殺” (日本語). 朝日新聞(朝刊、1社) (朝日新聞社): p. 31. (1998年8月2日) - 聞蔵IIビジュアルにて2014年10月14日閲覧。
関連項目
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