Apple M1
生産時期 | 2020年11月11日(日本時間)から |
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設計者 | Apple |
生産者 | TSMC |
CPU周波数 | 0.6 GHz から 3.2 GHz |
マイクロアーキテクチャ | 「Firestorm」と「Icestorm」 |
命令セット | ARMv8.5-A |
コア数 | 8コア(高性能コア×4 + 高効率コア×4) |
次世代プロセッサ | Apple M2 |
L2キャッシュ | 12MB(高性能コア) 4MB(高効率コア) |
GPU | Apple独自設計 8コアまたは7コア |
Apple M1は、AppleがMacおよびiPad向けにARMアーキテクチャのライセンスを受けて設計したシステムオンチップ(SoC)である[1]。TSMCの5nmプロセス製造されている。
2020年11月10日のApple Eventで発表された。Appleが「省電力シリコンとしては世界最速のCPUコア」「ワット当たりのCPU性能は世界最高」と述べている[1]他、実際にもAppleの主張が正しいことが数々のベンチマークや記事で判明している[2][3][注釈 1][9]。なお、M1のシングルコア性能(シングルスレッド性能)すなわちコアあたりのIPCが高い理由は、演算器 (ALU) と命令デコーダーの搭載数に起因している[10]。一方、メモリ容量がボトルネックとなるケースでは、8GBモデルではプロセッサ性能を活かせないこともある[11]。
Linuxでは、2021年のLinuxカーネル5.13以降においてサポートされている[12]。
仕様
[編集]概要
[編集]Intel MacデバイスではIntel製CPUに加えGPUや各種チップセット、さらにApple独自のチップ(Apple T2等)を個別に搭載していたが、Apple M1はiPhone 12等で搭載されているA14 BionicをベースにCPUやGPUのコア数を増強し、さらに必要な機能を追加して1つのチップとして統合したものである。これにより処理能力の向上と消費電力の抑制を両立し、Intel Macデバイスに比べ電源管理の最適化が容易となる。
CPU
[編集]ARM big.LITTLEと似たAppleの独自仕様を採用し、高性能コア「Firestorm」と高効率コア「Icestorm」各4コアの計8コアの構成とベースとなったA14 Bionicから増強されている[13][14]。Appleは、高効率コアの消費電力が高性能コアの10分の1だと述べている。Firestorm「高性能コア」は、192KBのL1命令キャッシュと128KBのL1データキャッシュ、12MBのL2キャッシュは高性能コア内で共有し、クロック周波数は0.6 GHz〜3.204 GHz、最大消費電力は13.8W。Icestorm「高効率コア」は、128KBのL1命令キャッシュと64KBのL1データキャッシュ、4MBのL2キャッシュは高効率コア内で共有し、クロック周波数は0.6 GHz〜2.064 GHz、最大消費電力は1.3W[15]となっている。
その他
[編集]上記のCPU以外では、8コア(一部のモデルでは7コア)GPU、16コアNeural Engineを搭載しており、上記のコンポーネント以外にも画像信号プロセッサ(ISP)、NVMeストレージコントローラ、Thunderbolt 4 コントローラ(実際の製品ではThunderbolt 3に制限)、Secure Enclave なども搭載されている。
M1チップはユニファイドメモリ構造であり、CPUやGPUといったチップ内すべてのコンポーネントがメモリアドレスを共有している。メモリには4266 MHzのLPDDR4X SDRAM[16]が使用されており、下記画像の通りSoCと同一基板上にDRAMチップがハンダ付けで実装されている(SiPではない)。容量は8GBと16GBの2種類がある。
M1を搭載したMacでは、Rosetta 2を介してIntel Mac用ソフトウェア、iPhoneやiPadのアプリを動かすことができる[2][3]。
搭載モデル
[編集]Apple M1チップは、以下の5モデルに搭載されている[17][18]。MacBook Air (M1, 2020)の下位モデルおよびiMac (M1, 2021)の下位モデルでは、GPUコアが1つ無効化され、7コアになっている[19]。
- MacBook Air (M1, 2020)[20]
- MacBook Pro (13-inch, M1, 2020) [21]
- Mac mini (M1, 2020) [22]
- iMac (M1, 2021)
- 11インチiPad Pro (第3世代)
- 12.9インチiPad Pro (第5世代)
- iPad Air (第5世代)[23]
画像
[編集]- ヒートスプレッダ付きのApple M1プロセッサ。右に見えている2つのチップは積層されたLPDDR4X SDRAMである
関連する同世代SoC
[編集]以下の表は「Firestorm」と「Icestorm」マイクロアーキテクチャに基づいた各種SoCを示している。
チップ名 | CPUコア数(高性能+高効率) | GPUコア数 | メモリ (GB) | トランジスタ数 |
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A14 | 6 (2+4) | 4 | 4 - 6 | 118億 |
M1 | 8 (4+4) | 7 | 8 - 16 | 160億 |
8 | ||||
M1 Pro | 8 (6+2) | 14 | 16 - 32 | 337億 |
10 (8+2) | ||||
16 | ||||
M1 Max[注 1] | 10 (8+2) | 24 | 32 - 64 | 570億 |
32 | ||||
M1 Ultra[注 1] | 20 (16+4) | 48 | 64 - 128 | 1140億 |
64 |
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ M1よりも高いターボクロック周波数を持つx86系プロセッサに対しても、M1はシングルスレッド性能で上回っていることが示されている。ただし、当該記事の比較対象として挙げられているAMD Ryzen 7 4700U[4]、Intel Core i7-1185G7[5]およびCore i7-1065G7[6]は、いずれもプロセスルールの世代や物理コア数などがM1とは異なり、また実験環境はオペレーティングシステムなども異なるため、対照実験の原則の観点からは公平な比較とは言えない。GPUの比較にもMetalとOpenGLという指向の異なるAPIを使ってしまっており、公平性を欠いている。なお、Intel公式の製品リストには「Core i7-8565U」[7]および「Core i7-8665U」[8]は記載されているものの、当該記事内に登場する「Core i7-8865U」に関しては記載がない。
出典
[編集]- ^ a b “Apple、M1チップを発表”. Apple(日本) (2020年11月10日). 2020年11月14日閲覧。
- ^ a b “「Apple M1」のMacBook AirとPro、Mac miniを3台まとめて実力チェック 驚異的な性能が明らかに”. ITmedia PC USER. 2020年12月25日閲覧。
- ^ a b 笠原一輝 (2020年11月24日). “【笠原一輝のユビキタス情報局】 Apple M1の実力を最新世代のIntel/AMD CPUと比較。M1が両者を大きく上回る結果に”. PC Watch. 株式会社インプレス. 2020年12月25日閲覧。
- ^ AMD Ryzen™ 7 4700U Drivers & Support | AMD
- ^ インテル® Core™ i7-1185G7 プロセッサー
- ^ インテル® Core™ i7-1065G7 プロセッサー
- ^ インテル® Core™ i7-8565U プロセッサー
- ^ インテル® Core™ i7-8665U プロセッサー
- ^ “「吊るしで十分ですよ」 M1搭載MacBook Airを手にしたデザイナーは言った”. ITmedia NEWS. 2020年12月25日閲覧。
- ^ Apple Silicon “M1”はとにかくシングルコア性能が高い:新連載「Apple Silicon M1チップはなぜ高性能なのか」(2/2 ページ) - ITmedia NEWS
- ^ M1 Macは敗れたままなのか? 音楽制作プラグインの負荷を再検証した:iOS音楽アプリプロデューサーがM1 Macを使ってみたら(1/3 ページ) - ITmedia NEWS
- ^ “2021年6月30日 Apple M1チップをサポートしたLinux 5.13がリリース:Linux Daily Topics”. gihyo.jp. 2021年10月6日閲覧。
- ^ “10年間でノウハウを蓄積、Appleプロセッサの集大成となった「M1」”. EE Times Japan. 2020年12月25日閲覧。
- ^ “Apple M1 Chip”. Apple.com. Apple. 11 November 2020閲覧。
- ^ “I noticed a lot of reviews getting confused by the CPU clock and what the specs were there, here's a live dump of what the Performance and Efficiency clusters are up to during a Cinebench R23 multithread bench.” (英語). Twitter. 2020年11月19日閲覧。
- ^ “M1 MacBook Air & Pro - EXCLUSIVE Apple Interview! | The Tech Chap - YouTube”. www.youtube.com. 2020年11月14日閲覧。
- ^ “New MacBook Pro, MacBook Air, Mac Mini With Apple M1 SoC” (英語). NDTV Gadgets 360. 2020年11月11日閲覧。
- ^ 福田ミホ (2020年11月11日). “今日のAppleイベントで出たものまとめ #AppleEvent”. www.gizmodo.jp. mediagene Inc.. 2020年11月11日閲覧。
- ^ “13インチMacBook Airを購入”. Apple(日本). 2020年11月11日閲覧。
- ^ “MacBook Air (M1, 2020) - 技術仕様”. support.apple.com. 2020年11月11日閲覧。
- ^ “MacBook Pro (13-inch, M1, 2020) - 技術仕様”. support.apple.com. 2020年11月11日閲覧。
- ^ “Mac mini (M1, 2020) - 技術仕様”. support.apple.com. 2020年11月11日閲覧。
- ^ “「iPad Air(第5世代)」が3月18日発売 5G対応でM1チップ搭載、7万4800円から”. ITmedia Mobile. (2022年3月9日) 2022年3月9日閲覧。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- Apple M1チップ - Apple - ウェイバックマシン(2021年4月18日アーカイブ分)