arXiv

arXiv
arXivのロゴ
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URL
https://arxiv.org/
タイプ プレプリントサーバ
分野 物理学数学計算機科学数量生物学英語版
使用言語 英語
項目数 100万本以上の論文[1]
(2014年末時点)
閲覧 無料
登録 不要
著作権 コピーライト
運営元 コーネル大学図書館
営利性 非営利
設立 1991年
査読制度 なし

arXiv(アーカイヴ、archiveと同じ発音)は、物理学数学計算機科学数量生物学英語版、数量ファイナンス統計学電子工学システム科学経済学の、プレプリントを含む様々な論文が保存・公開されているウェブサイトである。論文のアップロード(投稿)、ダウンロード(閲覧)ともに無料で、論文はPDF形式である。1991年にスタートして、プレプリント・サーバーの先駆けとなったウェブサイトである。大文字の X をギリシャ文字カイ(Χ)にかけて archive と読ませている。

現代(2019年)においてはこうした仕組みのサイトは特に珍しいものでもない。しかし、arXivの設立当初(1990年代初頭)においては、学術出版社大学図書館を介さずに研究者同士がインターネットを介して直接に論文をやりとりできる場として、学術出版関係者に大きな驚きをもって受けとめられた[2]

2015年8月現在106万報以上の論文が保存されている。毎月8,000報を超える論文が追加されている[3]。1991年、LANL preprint archiveという名称でロスアラモス国立研究所を運営元としてスタートし、1999年にarXiv.orgと改名。現在はコーネル大学図書館が運営元となっている。

歴史

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ポール・ギンスパーグ

arXivの前身はLANL preprint archiveで、1991年、ロスアラモス国立研究所の研究員であったポール・ギンスパーグにより、物理学分野のプレプリントを保存しておくためのサーバとして開発された。当時のドメインは xxx.lanl.gov 運営元はロスアラモス国立研究所であった。1999年にarXiv.orgと改名。2012年現在はコーネル大学図書館が運営元となっている。

査読

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arXivは時間のかかる査読プロセス(平均して数ヶ月、長いと一年以上かかる)を避けて、素早い情報交換を行なうことを目的として設置されている。そのため、基本的に登録された論文の内容を精査してから公開・非公開を決める、という作業はしていない。とはいえ完全にフリーパスだという事ではない。あまりにひどい論文は削除されたり、登録分野から移動させられたりする。

例えば2001年にアメリカのテネシー州在住の創造論者が、神による宇宙の創造を説く十篇の論文をarXivに登録した事がある。この論文はarXivのスタッフによって全てサーバから削除され、登録者のアカウントは停止された。ただ論文の登録者はこれを不服としてarXivの管理者を相手取って訴訟を起こした[4]

ミラーサーバ

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arXivは2012年7月現在、メインのサーバを除き世界4ヵ国にミラーサーバを持つ[5]。アメリカのコーネル大学図書館のサーバを中心に、あとの4ヶ所はミラーサーバとして、各地のユーザーに対して高速なアクセス環境を提供する役目を担っている。日本のミラーサーバは京都大学基礎物理学研究所(旧湯川記念館)に置かれていた(2015年12月運用停止)。以下にミラーサーバの一覧を示す。

稼働中のミラーサーバ
所在国 URL 引受機関 特記事項
中華人民共和国の旗 中国 http://cn.arXiv.org 中国科学院理論物理研究所
ドイツの旗 ドイツ http://de.arXiv.org ?
インドの旗 インド http://in.arXiv.org 国立数理科学研究所
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 http://lanl.arXiv.org ロスアラモス国立研究所 旧本家
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 http://arXiv.org コーネル大学図書館 現在の本家
運用停止
所在地 URL 引受機関 特記事項
スペインの旗 スペイン http://es.arXiv.org サラゴサ大学理論物理学科 2018年3月運用停止
フランスの旗 フランス http://fr.arXiv.org CCSd(Centre pour la Communication Scientifique Directe) 2016年4月運用停止
日本の旗 日本 http://jp.arXiv.org 京都大学基礎物理学研究所(旧 湯川記念館) 2015年12月運用停止
イギリスの旗 イギリス http://uk.arXiv.org   2014年11月運用停止
イスラエルの旗 イスラエル http://il.arXiv.org テルアビブ大学テクニオン工科大学ワイツマン科学研究所
ヘブライ大学ネゲヴ・ベン=グリオン大学バル=イラン大学
2012年10月運用停止
中華民国の旗 台湾 http://tw.arXiv.org 國家高速網路與計算中心(National Center for High-performance Computing) 2012年8月運用停止
ブラジルの旗 ブラジル http://br.arXiv.org サンパウロ大学物理学科 2012年4月運用停止
ロシアの旗 ロシア http://ru.arXiv.org Institute of Theoretical and Experimental Physics(モスクワ) 2012年4月運用停止
オーストラリアの旗 オーストラリア http://au.arXiv.org アデレード大学物理化学研究科 2012年2月運用停止
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 http://aps.arXiv.org アメリカ物理学会ブルックヘブン国立研究所 2012年2月運用停止
イタリアの旗 イタリア http://it.arXiv.org SISSA 2009年1月運用停止
大韓民国の旗 韓国 http://kr.arXiv.org ICPR(Information Center for Physics Research)、
KOSEF(KOrea Science and Engineering Foundation)、ソウル大学校
2008年12月運用停止
南アフリカ共和国の旗 南アフリカ共和国 http://za.arXiv.org ? 2007年6月運用停止

有名論文

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arXivにはさまざまな論文が投稿されているが、ここではその中でも特に有名な論文を紹介する。

ポアンカレ予想の解決

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ポアンカレ予想を解決した三部の論文。ロシア人数学者グリゴリー・ペレルマンが2002年から2003年にかけて投稿した論文で、この功績によりペレルマンは2006年のフィールズ賞を受賞した(ただし本人は辞退)。arXivはその基本的な使われ方として、論文が学術雑誌に正式に掲載される前のインターネット上での先行発表のような形で使用されている。そのためarXivへ論文が投稿された場合は並行して学術雑誌へも同じ論文が投稿されているのが普通である。しかしペレルマンは論文をarXivに投稿しただけで学術雑誌には一切投稿しなかった。arXivは基本的にただのアップローダであることから、論文が後に専門の学術雑誌に掲載されない場合、そうした論文は投稿者の正式な研究上の業績と見なされにくい。ペレルマンの発表方法が「arXivにのみ投稿する」という変則的なものであったことは、2010年にミレニアム懸賞問題の賞金100万ドルをペレルマンに授与するかどうかを決定する際にひとつの問題となった[6]ポアンカレ予想#賞金100万ドルも参照)。最終的に100万ドルをペレルマンに授与することになったが、本人は賞金の受賞を辞退した。

投稿論文の識別子

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arXivに投稿された論文には一意な識別子(Identifier)が与えられる。識別子の付与規則は2007年4月1日を境に改定されており、旧式のものと新式のもの二種類がある[7]。以下、順を追って説明する。

旧式

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以下は2007年3月31日まで取られていた識別子の付与規則。先頭に論文の投稿分野を示すアルファベットの文字列、その後スラッシュに続いて投稿された年と月を示す四桁の数字、そして最後にその分野でその月その分野に何本目に投稿された論文なのかを示す三桁の数字が続く。この文字列全体でひとつの論文を指し示す一意な識別子となっている[7]。具体例を一つ示す。

arXiv:math.DG/0211159 

各項は次のような意味を持つ。

  • math:数学分野の
  • DG:微分幾何学分野(Differential Geometry)に
  • 0211:2002年11月に投稿された
  • 159:159番目の論文

新式

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2007年4月1日からはジャンルを表すアルファベットがなくなり、よりシンプルな形となった。また数学(math)、固体物理(cond-mat)、宇宙物理学(astro-ph)などの分野では月間の論文投稿数が1000本を上回ることが確実になっていたため、末尾に振られる数字の桁数が三桁から四桁に増やされた。さらに論文の改訂版のアップロードが頻繁に行われるため、論文の版を明示できるように、末尾にアルファベットのv(version)と版を現す数字をつけるようになった[7]。具体例を一つ示す。

arXiv:0711.4630v2 

各項は次のような意味を持つ。

  • 0711:2007年11月に投稿された
  • 4630:4630番目の論文で
  • v2:第二版にあたる

脚注

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  1. ^ Vence, Tracy (December 29, 2014), “One Million Preprints and Counting: A conversation with arXiv founder Paul Ginsparg”, The Scientist, http://www.the-scientist.com/?articles.view/articleNo/41677/title/Q-A--One-Million-Preprints-and-Counting/ .
  2. ^ 三根慎二 「学術情報メディアとしてのarXivの位置づけ」 Library and information science (61), 25-58, 2009 三田図書館・情報学会 NAID 120002317556
  3. ^ arXiv monthly submission rate statistics”. Arxiv.org. 2015年8月8日閲覧。
  4. ^ Geoff Brumfiel, "Ousted creationist sues over website," Nature 420, 597 (2002); doi:10.1038/420597b オンライン・コピー
  5. ^ "arXiv mirror sites | arXiv e-print repository" 最終閲覧日 2022年2月1日
  6. ^ Jackson, Allyn (September 2006). “Conjectures No More? Consensus Forming on the Proof of the Poincaré and Geometrization Conjectures” (PDF). Notices of the AMS. http://www.ams.org/notices/200608/comm-perelman.pdf. 
  7. ^ a b c Understanding the arXiv identifier のページより。最終閲覧日 2008年1月10日

関連項目

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外部リンク

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