ときわ (補給艦)

ときわ
基本情報
建造所 石川島播磨重工業 東京工場
運用者  海上自衛隊
艦種 補給艦
級名 とわだ型
母港 横須賀
所属 護衛艦隊第1海上補給隊
艦歴
計画 昭和62年度計画
発注 1987年
起工 1988年5月12日
進水 1989年3月23日
就役 1990年3月12日
要目
基準排水量 8,150トン
満載排水量 12,150 トン
全長 167.0m
最大幅 22.0m
深さ 15.9m
吃水 8.2m
機関 三井造船16V42M-A ディーゼル × 2基
出力 26,000PS
推進器 スクリュープロペラ × 2軸
速力 最大速 22ノット
乗員 145名
兵装 12.7mm機関銃M2 × 2丁
(分類上は小火器扱い必要時のみ設置)
レーダー OPS-28 対水上用
OPS-20 航海用
電子戦
対抗手段
Mk.137 デコイ発射機 × 4基
テンプレートを表示

ときわローマ字JS Tokiwa, AOE-423)は、海上自衛隊補給艦とわだ型補給艦の2番艦。艦名は常盤池(通称「常盤湖」)に由来する。旧海軍の浅間型装甲巡洋艦常盤」、防衛庁実験艇「ときわ」に続いて、日本の同名(同音)艦艇としては3代目。

本記事は、本艦の艦歴について主に取り扱っているため、性能や装備等の概要についてはとわだ型補給艦を参照されたい。

艦歴

[編集]
アメリカ海軍ミサイル駆逐艦ディケーター」へ燃料補給を行う補給艦ときわ
艦橋上からの眺め

「ときわ」は、中期防衛力整備計画に基づく昭和62年度(1987年度)計画8,100トン型補給艦4013号艦として、石川島播磨重工業東京工場で1988年5月12日に起工され、1989年3月23日に進水。1990年3月12日に就役し、自衛艦隊に直轄艦として編入され、横須賀基地神奈川県)に配備された。

1991年4月26日湾岸戦争に伴うペルシャ湾掃海派遣部隊所属艦として、掃海母艦「はやせ」、掃海艇あわしま」「さくしま」「ゆりしま」「ひこしま」とともに横須賀を出港し、ペルシャ湾機雷掃海任務に従事する艦艇の補給任務等に従事する(自衛隊ペルシャ湾派遣)。この時、自衛隊員と日本国内の家族との連絡のために「海上自衛隊ときわ船内郵便局」が設置された。海上自衛隊の艦艇内に船内郵便局が設置されたのは南極地域観測隊の輸送・研究任務のために運用されている砕氷艦しらせを除きこの時が初めてであり、船内郵便局の消印欲しさに激励手紙が送られる事態となり[1]、寄港時を見計らって未使用切手に消印を押してもらおうとする業者もあった。

1994年護衛艦くらま」「さわかぜ」「はたかぜ」「こんごう」「あさぎり」「ゆうぎり」「はまぎり」「あまぎり」および潜水艦たけしお」と共に環太平洋合同演習(RIMPAC)に参加。

1994年6月24日護衛艦隊に直轄艦として編入された。

1999年9月23日トルコ北西部地震の被災者救援のため 国際緊急援助隊法に基づき輸送艦おおすみ」、掃海母艦「ぶんご」と共にトルコ共和国派遣海上輸送部隊を編成。[2] 神戸港よりトルコ共和国イスタンブールに向け仮設住宅の輸送を実施する。 平均速力18kt(約33km/h)で連続23日間という当時海上自衛隊史上最長の長距離連続航海[3]を行った。

2001年11月25日テロ対策特別措置法に基づき、護衛艦「さわぎり」とともにインド洋に向けて呉基地広島県)を出港する。

2002年2月12日、テロ対策特別措置法に基づき、護衛艦「はるな」「さわかぜ」と共にインド洋に派遣。同年6月まで任務に従事し、8月7日帰国した。

2002年11月25日、テロ対策特別措置法に基づき、インド洋に派遣。翌2003年3月9日フランス海軍への燃料補給を開始。3月11日ニュージーランド海軍への燃料補給を開始。3月20日イタリア海軍への燃料補給を開始。この日にイラク戦争が開戦する。3月28日オランダ海軍への燃料補給を開始。4月5日ギリシャ海軍への燃料補給を開始。4月6日カナダ海軍への燃料補給を開始。4月8日スペイン海軍への燃料補給を開始。同年4月まで任務に従事し、5月20日帰国した。

2003年10月28日、テロ対策特別措置法に基づき、護衛艦「ひえい」「あけぼの」と共にインド洋に派遣。2004年3月まで任務に従事し、4月22日帰国した。

2004年12月26日に発生したスマトラ沖地震の被災地援助の為、国際緊急援助隊派遣法に基づき護衛艦「くらま」、輸送艦くにさき」とともに派遣され、援助物資の輸送などの救援活動を実施した。

2005年11月14日、テロ対策特別措置法に基づき、護衛艦「きりさめ」と共にインド洋に派遣。2006年3月まで任務に従事し、4月23日帰国した。

2006年4月3日、護衛艦隊隷下に第1海上補給隊が新編され編入された。

2007年7月13日、テロ対策特別措置法に基づき、護衛艦「きりさめ」と共にインド洋に派遣。11月2日、根拠法であるテロ対策特別措置法は延長されず期限切れにより失効。展開中の全部隊は撤収、11月23日帰国した。

2009年3月16日新テロ特措法に基づき、護衛艦「あけぼの」と共にインド洋へ向けて出航[4]9月1日帰国。

2011年3月11日東北地方太平洋沖地震東日本大震災)の発生による災害派遣のため横須賀を出港する。3月13日には搭載ヘリコプターが、アメリカ海軍空母ロナルド・レーガン」の搭載ヘリコプター2機とともに非常食3万食を、被災地である宮城県気仙沼市に輸送した。

2011年10月31日、横須賀基地に停泊中、油流出事故が発生。横須賀港務隊等が出動してオイルフェンスを張るなどして油を回収した。流出元は、機関室の発電機と見られている。

2012年1月7日、横須賀基地に停泊中の20時40分ごろに火災事故が発生。海上自衛隊による防火部署(応急班)での対処に加え、横須賀市消防局が出動して消火した。火元は、機関室の発電機とみられている。負傷者は出なかった[5] [6]

2018年4月27日と28日、関東南方海域において護衛艦すずなみ」、P-3C及び潜水艦とともに英海軍との共同訓練に参加する。主要訓練項目は対潜戦訓練、模擬洋上給油訓練、航空機相互発着艦訓練、戦術運動等。英海軍からはフリゲートサザーランド」が参加した[7]

2018年9月に艦内で3等海尉の男性が自殺し、乗員約140名へのアンケート調査により、艦長などの複数の上官によるパワーハラスメントの疑いがあるとされ、同年12月18日に護衛艦隊司令部に事故調査委員会が置かれる[8]。艦長は同月27日付の人事異動で護衛艦隊司令部付とされた[9]

2019年3月20日深夜、東シナ海の公海上(上海の南約410kmの沖合)で北朝鮮船籍のタンカー「YU SON(ユソン)号」(IMO番号:8691702)と船籍不明の小型船舶が、国連安保理決議で禁止されている「瀬取り」とみられる作業を行っていたことを確認した[10]。 なお「YU SON号」は、2018年3月に国連安保理北朝鮮制裁委員会から資産凍結・入港禁止の対象に指定された船舶であり、同日午前にも別の船舶と瀬取り行為を行っているのを海上自衛隊第15護衛隊所属の護衛艦「おおよど」が現認している。

2020年1月12日未明、東シナ海の公海上(上海の東約240kmの沖合)で北朝鮮船籍のタンカー「CHON MA SAN(チョンマサン)号」(IMO番号:8660313)と船籍不明の船舶が、接舷した上で蛇管(ホース)を接続し国連安保理決議で禁止されている「瀬取り」とみられる作業を行っていたことを確認した[11][12]。 なお「CHON MA SAN号」は、2018年3月に国連安保理北朝鮮制裁委員会から資産凍結・入港禁止の対象に指定された船舶である。

2021年6月23日から24日にかけて、関東南方海域において護衛艦「きりしま」、「まや」、「はぐろ」とともに米海軍駆逐艦マスティン」と日米共同訓練を実施した[13]

同年9月3日10時頃、久米島の北西約170kmの海域において、同海域を南進する中国海軍ルーヤンⅢ級ミサイル駆逐艦1隻を確認、同日19時頃には、久米島の北西約190kmの海域において、同海域を南進する中国海軍ソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦1隻を確認した。 その後、これらの艦艇が、沖縄本島宮古島との間の海域を南下し、太平洋に進出したことを確認した。 また、9月5日、これらの艦艇が、同海域に所在する中国海軍ルーヤンⅡ級ミサイル駆逐艦と合流し、台湾与那国島との間の海域を北上し、東シナ海へ向けて航行したことを確認した。 この間、第11護衛隊所属の護衛艦あまぎり」、第46掃海隊所属の掃海艇くろしま」及び第5航空群所属P-3C哨戒機と共同し、所要の情報収集・警戒監視を行った[14]

同年9月4日、東シナ海において米海軍駆逐艦「バリー」と日米共同訓練(ILEX21-4)を実施した[15]

2023年7月28日紀伊半島南東海域において米海軍駆逐艦「ベンフォールド」と日米共同訓練(ILEX23-4)を実施した[16]

2024年7月28日、東シナ海においてカナダ海軍フリゲートモントリオール」と日加共同訓練を実施した。訓練項目は洋上補給[17]。同年8月23日から9月2日にかけて、グアム島周辺海空域において護衛艦「ありあけ」」(IPD24第2水上部隊)、潜水艦(IPD潜水艦部隊)とともに米国主催多国間共同訓練(PACIFIC VANGUARD24)に参加した。米海軍駆逐艦「デューイ」、 補給艦「リチャード・E・バード」、P-8AEA-18G韓国海軍駆逐艦「イ・スンシン」、カナダ海軍フリゲート「バンクーバー」が参加し、各種戦術訓練(ミサイル射撃訓練、対潜戦訓練、対水上戦訓練、洋上補給等)、PHOTOEXを実施した[18]

現在、護衛艦隊第1海上補給隊に所属(定係港は横須賀)。

歴代艦長

[編集]
歴代艦長(特記ない限り1等海佐
氏名 在任期間 出身校・期 前職 後職 備考
01 寺西 弘 1990.3.12 - 1991.3.19   ときわ艤装員長 横須賀地方総監部監察官
02 両角良彦 1991.3.20 - 1992.8.2 長崎大
13期幹候
くらま艦長 第2海上訓練指導隊司令 就任時2等海佐
1991.7.1、1等海佐
03 牧山 元 1992.8.3 - 1994.8.29 防大7期 誘導武器教育訓練隊司令 横須賀地方総監部監察官
04 林 勝彦 1994.8.30 - 1996.3.31 21期幹候 くらま艦長 海上自衛隊第1術科学校生徒部長
05 谷津憲治 1996.4.1 - 1997.12.7 東海大
22期幹候
はるな艦長 第31護衛隊司令
06 江崎一洋 1997.12.8 - 1999.3.28 防大15期 自衛艦隊司令部 海上自衛隊第1術科学校生徒部長 就任時2等海佐
1998.7.1、1等海佐
07 西田利雄 1999.3.29 - 2000.3.29 防大16期 たちかぜ艦長 技術研究本部第5研究所
海上試験室長
08 鈴木英隆 2000.3.30 - 2001.3.26 防大18期 技術研究本部技術開発官
(誘導武器担当)付
開発指導隊群司令部
09 池田泰博 2001.3.27 - 2002.9.19 防大20期 ねむろ艦長 横須賀基地業務隊補充部付 2等海佐
10 藤田民雄 2002.9.20 - 2003.7.31 防大14期 呉地方総監部監察官 自衛艦隊司令部
11 川井信良 2003.8.1 - 2005.3.31 防大17期 海洋業務群司令部幕僚 2等海佐
12 吉田 明 2005.4.1 - 2006.7.2 防大21期 こんごう艦長 誘導武器教育訓練隊司令
13 菅原貞眞 2006.7.3 - 2008.3.25 防大20期 艦艇開発隊開発部長   2等海佐
14 高森安生 2008.3.26 - 2009.9.30 防大23期 さざなみ艦長 東京業務隊付 2等海佐 
15 高橋政則 2009.10.1 - 2011.12.4   にちなん艦長   2等海佐
16 水谷宗和 2011.12.5 - 2013.10.10   護衛艦隊司令部付 横須賀基地業務隊付 2等海佐
17 内藤裕之 2013.10.11 - 2015.4.19 防大29期 横須賀海上訓練指導隊砲雷科長 東京業務隊付 2等海佐
18 鈴木雅博 2015.4.20 - 2017.1.11 防大29期 呉海上訓練指導隊副長
兼 指導部長
海上自衛隊幹部学校運用教育研究部
学校教官
2等海佐
19 高木征教 2017.1.12 - 2018.12.26 海上自衛隊幹部学校教育研究部
学校教官
護衛艦隊司令部付[9] 2等海佐
20 斎藤 貴 2018.12.27 - 2020.5.12 防大32期 護衛艦隊司令部幕僚
兼 自衛艦隊司令部
2等海佐
21 斎藤夕祈雄 2020.5.13 - 2022.2.17 防大34期 誘導武器教育訓練隊教育部長
兼 学生隊長
横須賀基地業務隊司令 2等海佐
22 奥村博隆 2022.2.18 - 2023.8.27 防大36期 護衛艦隊司令部 2等海佐
23 松尾 巧 2023.8.28 - 防大35期 佐世保海上訓練指導隊副長 2等海佐

脚注

[編集]
  1. ^ 「モテモテ!?掃海艇 「船内郵便局の消印欲しい」」 1991年5月7日付『毎日新聞』朝刊
  2. ^ 「トルコ共和国における国際緊急援助活動に必要な物資の輸送」 平成12年度版『防衛白書
  3. ^ 「1日も早く仮設住宅をトルコへ 海上自衛隊初の23日連続航海で」 平成12年度版『防衛白書』
  4. ^ 統合幕僚監部補給活動のための部隊の出航について2009年3月5日
  5. ^ “海自補給艦で火災 横須賀基地けが人なし”. 東京新聞 (東京新聞). (2012年1月8日). オリジナルの2012年1月9日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20120109194616/http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012010802000020.html 2012年1月8日閲覧。 
  6. ^ 朝雲新聞 横須賀停泊中 補給艦で火災 Archived 2012年3月6日, at the Wayback Machine. 2012年1月12日
  7. ^ 日英共同訓練の実施について (PDF)
  8. ^ 『毎日新聞』 2018年12月25日
  9. ^ a b 海自3尉自殺、「ときわ」艦長を更迭『毎日新聞』ニュースサイト(2018年12月27日)2019年1月9日閲覧。
  10. ^ 北朝鮮船籍タンカー「YU SON(ユソン)号」と船籍不明の小型船舶による洋上での物資の積替えの疑い(平成31年3月20日)”. 外務省 (2019年2月7日). 2019年12月5日閲覧。
  11. ^ 北朝鮮関連船舶による違法な洋上での物資の積替えの疑い”. 防衛省 (2020年2月7日). 2020年2月8日閲覧。
  12. ^ 北朝鮮船籍タンカー「CHON MA SAN(チョンマサン)号」と船籍不明の船舶による洋上での物資の積替えの疑い(令和2年1月12日)”. 外務省 (2020年2月7日). 2020年2月8日閲覧。
  13. ^ 日米共同訓練について 海上幕僚監部(令和3年6月25日) (PDF)
  14. ^ 中国海軍艦艇の動向について 統合幕僚監部(令和3年9月8日) (PDF)
  15. ^ 日米共同訓練(ILEX21-4)について 海上幕僚監部(令和3年9月6日) (PDF)
  16. ^ 日米共同訓練(ILEX23-4)について 海上幕僚監部(令和5年7月28日) (PDF)
  17. ^ 日加共同訓練について 海上幕僚監部(令和6年7月29日) (PDF)
  18. ^ 米国主催多国間共同訓練(PACIFIC VANGUARD24)について 海上幕僚監部(令和6年9月3日) (PDF)

参考文献

[編集]
  • 石橋孝夫『海上自衛隊全艦船 1952-2002』(並木書房、2002年)
  • 世界の艦船 増刊第66集 海上自衛隊全艦艇史』(海人社、2004年)

関連項目

[編集]