死の発送

死の発送
本作執筆時に取材対象となった[1]田端機関区(現:田端運転所)。当時は鉄道による荷物輸送が広く行われていた。
本作執筆時に取材対象となった[1]田端機関区(現:田端運転所)。当時は鉄道による荷物輸送が広く行われていた。
作者 松本清張
日本の旗 日本
言語 日本語
ジャンル 長編小説
発表形態 雑誌連載
初出情報
初出 『週刊コウロン』 1961年4月10日 - 8月21日
『小説中央公論』 1962年5月・10月・12月号
初出時の題名 『渇いた配色』
出版元 中央公論社
刊本情報
刊行 『死の発送』
出版元 角川書店
出版年月日 1982年11月25日
装幀 岡村元夫
装画 伊藤憲治
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死の発送』(しのはっそう)は、松本清張の長編推理小説。『渇いた配色』のタイトルで『週刊コウロン』に連載され(1961年4月10日号 - 8月21日号)、同誌休刊後、『小説中央公論』に掲載(1962年5月・10月・12月号)、加筆・訂正の上、1982年11月にカドカワノベルズより刊行された。

2014年にテレビドラマ化されている。

あらすじ

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25歳にして税金5億円を横領したかどで社会を騒がせ、服役していた元N省の官吏・岡瀬正平が、7年の刑を終えて出所した。警視庁では、岡瀬の費消した先を調べたが、その使いぶりが乱脈過ぎたか、約1億円が使途不明のままとされていた。

夕刊紙Rの編集長・山崎は、記者の底井に、岡瀬の匿し金の行方を追跡するよう命じた。山崎の意図に疑問を感じつつも、岡瀬の行動を日々張込み、尾行を続ける底井。しかし、2カ月近く経った時点で、岡瀬は福島県内の山林で死体となって発見された。犯人逮捕の報道が出ない中で、ひそかに単独行動を始めた様子の山崎に、底井は不審を抱く。

やがて山崎は、6月15日の朝に自宅を出て以来、消息不明となり、東北本線五百川駅近くで、ジュラルミントランク詰めの死体となって発見された。ところが、トランクの発送元の田端駅に現れた男は、トランクに詰められた被害者の山崎自身であったという。

これは怪談か?犯人の仕掛けた重層的トリックが、事件の謎に挑む底井の行く手を阻む。

主な登場人物

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  • 原作における設定を記述。
底井武八
20代だが、狭いアパートに住み安月給に生きる、夕刊紙Rの記者。
山崎治郎
煽情的な記事で部数を伸ばす夕刊紙Rの編集長。以前は大新聞社の社会部長だったが、わがままが過ぎ、現在の新聞社に移籍。
岡瀬正平
5億円を横領した元官吏。出所後、新井薬師近くの叔父の家に落ち着くが、その後行動を開始する。
玉弥
神楽坂の茶屋に出ている芸妓。
末吉
東京競馬場で岡瀬と立ち話をしていた厩務員
西田孫吉
高名な調教師。東京競馬場でも有数の厩舎を持つ。
立山寅平
政界でも派手な存在として知られる代議士。競馬が趣味。

エピソード

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  • 本作の担当編集者であった宮田毬栄によると、清張は幸田文と共に『婦人公論』主催の講演旅行に講師として参加するため、『小説中央公論』掲載の原稿を蒲郡ホテルで執筆した。宮田は「幸田文さんは幸田露伴に拘泥していた清張さんにとって、憧れの目を向ける人だったろう。幸田さんには文学の話以上に、露伴の日常を尋ねたかったのではないだろうか」「急いで仕度をして食堂に行くと、もう幸田文さんと談笑している清張さんがいた。幸田さんは私に、「あなたは旅先で清張さんに五十枚も原稿を書かせてしまうのねえ、凄い」といわれた。清張さんが昨日からの経緯を話していたのだろう」「清張さんと私は、蒲郡や名古屋の風物を全然見ずに終るという変な旅だった」と回顧している[1]

テレビドラマ

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松本清張ドラマスペシャル
死の発送
ジャンル テレビドラマ
企画 水野綾子(フジテレビ)
脚本 扇澤延男
演出 国本雅広
出演者 向井理
製作
プロデューサー 千葉行利(ケイファクトリー)
宮川晶(ケイファクトリー)
制作 フジテレビ
放送
放送国・地域日本の旗 日本
放送期間2014年5月30日
放送時間金曜21:00 - 23:12

特記事項:
フジテレビ開局55周年特別番組
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松本清張ドラマスペシャル・死の発送』(まつもとせいちょうドラマスペシャル しのはっそう)は、2014年5月30日金曜21:00 - 23:12。ただし『金曜プレステージ』扱いはされない)、フジテレビ開局55周年特別番組として放送された。本ドラマでは、トランクの発送先は岩手県に設定されている。また、原作中のトリックに関係する鉄道輸送は、自動車輸送(トランクの発送は宅配便による)に置き換えられている。

キャスト

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スタッフ

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脚注

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出典

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  1. ^ a b 宮田毬栄「旅の時間の松本清張」(『松本清張研究』第三号(2002年、北九州市立松本清張記念館)収録)
  2. ^ 向井理、初の“松本清張”作品に挑戦!「セリフが多くて大変…」”. シネマカフェ (2014年4月23日). 2024年6月23日閲覧。

外部リンク

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