犬吠埼

犬吠埼
岬に屹立する犬吠埼灯台 近くには、レストランがある。
犬吠埼の位置を示した地図
犬吠埼の位置を示した地図
場所 日本の旗 日本
千葉県銚子市犬吠埼
座標 北緯35度42分28秒 東経140度52分10秒 / 北緯35.70778度 東経140.86953度 / 35.70778; 140.86953座標: 北緯35度42分28秒 東経140度52分10秒 / 北緯35.70778度 東経140.86953度 / 35.70778; 140.86953
年代 中生代白亜紀(1億2000万年前)
犬吠埼
犬吠駅(関東の駅百選)
日本の旗 日本
都道府県 千葉県
市町村 銚子市
面積
 • 合計 0.588967511 km2
人口
2019年令和元年)8月1日現在)[2]
 • 合計 655人
 • 密度 1,100人/km2
等時帯 UTC+9 (日本標準時)
郵便番号
288-0012[3]
市外局番 0479[4]
ナンバープレート 千葉

犬吠埼(いぬぼうさき)は、関東平野最東端に位置する千葉県銚子市太平洋に突出する水郷筑波国定公園に含まれる景勝地。岬には犬吠埼灯台が屹立する。岬一帯の町名にも犬吠埼が使用されている。郵便番号は288-0012[3]

本項では、犬吠埼を名称に冠した周辺施設についても解説する。

概要

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岬の航空写真(国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成)

日本三大河川の一つである利根川一級河川)の河口付近にあり、付近一帯は水郷筑波国定公園に含まれる銚子半島の景勝地である。

犬吠埼の「磯めぐり」は江戸時代には行われていた[5]。風光明媚な海岸線には数々の文人墨客が訪れ、文豪の地として親しまれ、海岸線沿いは歌碑や詩碑も多い。

日本一早い初日の出スポットとして有名である[注釈 1]。岬周辺の白亜紀地層は国の天然記念物に指定され、日本の地質百選にも選定されている。

沿岸には遊歩道が設けられており、北側には古くから「関東舞子」と呼び親しまれ、日本の渚百選にも選ばれた君ヶ浜(君ヶ浜しおさい公園)があり、国土地理院では君ヶ浜(東経140度52分21秒)を関東および千葉県の最東端としている。

海の難所として知られ、幕末には榎本武揚の率いる幕府の軍艦美加保丸が、付近の黒生(くろはえ)の岩礁に乗り上げて乗組員13名が亡くなった[6]

犬吠埼の岬には犬吠埼灯台が太平洋に向かって立つ。日本を代表する灯台の一つで、「世界灯台100選」「日本の灯台50選」にも選ばれている。歴史的文化財的価値が高く、国の登録有形文化財に登録され、海上保安庁により「Aランク保存灯台」ともなっている。2020年度には国の重要文化財に指定された[7][8][9]。灯台の出入口横に灯台の色に合わせた白く塗られた郵便ポスト丸型1号ポスト(郵便差出箱1号)が設置されていて投函した郵便物には全て犬吠埼をデザインした銚子郵便局の風景印が押される。

名称

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地名の由来

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犬吠埼という地名には諸説があるが、周辺には源義経の伝説が多く残り、地名も義経の愛犬「若丸」が岬に置き去りにされ、主人を慕う余り、7日7晩鳴き続けたことから名付けられたという説がある[5]。その愛犬はついに岩となったという伝承があるのが外川地区の「犬岩」である[5]。他にはかつて一帯にはアシカ(ニホンアシカ)が繁殖しており(近隣には海鹿島があり、明治時代には200 - 300頭のアシカが生息していたと伝えられる)、その鳴き声が犬に似ていたことから、犬吠埼と名付けられたという説もある。他に、アイヌ語のエンボウ(突出した岬)が変化したものとの説もある。

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日本では一般的に岬等の地名の「さき」には「崎」、灯台の名前には「埼」が使われることが多いが、犬吠埼では全国的にも珍しく地名も灯台名も「埼」が使用されている[10]

石切鼻

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付近の地質は中生代の砂岩で、砥石を切り出していたこともあり、犬吠埼は石切鼻とも呼ばれている[6]

自然

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白亜紀浅海堆積物(国の天然記念物)

太平洋に突出した銚子半島には、中生代白亜紀)から現代までの様々な地層が姿を見せている。海岸の植物や磯の動植物なども種類は豊かで、分布上も注目されるものが多い。

海洋動物

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ウミウウミネコなどの海鳥類が多く渡来する。

かつて一帯にはアシカ(ニホンアシカ)が繁殖しており、明治時代には200 - 300頭のアシカが生息していたと伝えられる。

崖地植物

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自生する崖地植物(岬先端)

犬吠埼や海鹿島、犬若など古い地層の崖地や岩場では、スカシユリ(ユリ科)やハマヒルガオ(ヒルガオ科)など海岸沿いにしか生息しない特有な崖地植物が集っている日本有数の海岸である[11]絶滅危惧Ⅱ類 (VU) であるハマサワヒヨドリなど非常に希少価値の高い植物も生息する[12]。犬吠埼灯台下遊歩道、犬吠埼園地周辺に多く生息する。

犬吠埼灯台下遊歩道には崖地植物についての生態展示(名札板設置)がされている。

白亜紀浅海堆積物

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銚子半島の東海岸の黒生から長崎鼻にかけて、1億3000万年前から1億年前の恐竜時代の地層を見ることができる。

犬吠埼は1億2000万年前の地層であり、海底痕跡を数多くみることができる学術的に貴重な地層となっている。そのため「犬吠埼の白亜紀浅海堆積物」として2002年に国の天然記念物に指定された。また2007年には「日本の地質百選」にも選定されている。一部は遊歩道上から間近に観察することが可能。砂岩泥岩互層の地層が見られる。

文学

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風光明媚な海岸線はかつて数々の文人墨客が訪れ、景勝地は「文豪の地」として親しまれた[13]

日本の俳人、詩人、小説家として有名である、高浜虚子佐藤春夫、尾張穂草など、海岸沿いには数多くの歌碑、詩碑が立つ。

代表作

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「犬吠の 今宵の朧 待つとせん」
「ここに来て をみなにならひ 名も知らぬ草花をつむ みづからの影踏むわれは 仰がねば 燈台の高さを 知らず 波のうねうね ふる里のそれには如かず ただ思ふ 荒磯に生ひて 松のいろ 錆びて 黝きを わが心 錆びて黝きを」
「わかれても 故郷の海の あゐいろが 目にあり秋よ さびしくあるかな」
尾張穂草

日本一早い初日の出

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犬吠埼からの日の出
川瀬巴水『犬吠の朝』(1931年・昭和6年)

富士山のような高地や離島を除く日本国内で、元旦初日の出が一番早く(午前6時46分)拝める場所として知られている。その為、各テレビ局での元旦早朝の初日の出中継では、犬吠埼から生中継を行うことも多い。

初日の出時刻 (参考)

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国立天文台が「国内の初日の出時刻のランキング」を公開している[14]。高地や離島を除く日本国内中、北海道本州四国九州の平地で一番早いとなっている。

以下初日の出時刻参考。

1月1日(元旦)の日の出時刻
主な場所 時間 備考
0 南鳥島 5:27 日本最東端
0 母島 6:20 一般人が来訪できる地で一番早い
0 富士山頂 6:42 北海道・本州・四国・九州で一番早い
1 犬吠埼 6:46 北海道・本州・四国・九州の平地で一番早い
2 納沙布岬 6:49 最東端(岬)
3 千葉市 6:49 近隣(千葉県庁所在地)
4 根室市 6:50 日本最東端(市町村)
5 東京都 6:50 近隣(首都)
6 与那国島 7:32 一番遅い、日本最西端

犬吠埼園地

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犬吠埼灯台下遊歩道

犬吠埼は水郷筑波国定公園の区域内にあり、地域の自然探勝のため犬吠埼園地が整備されている[15]。周辺にはホテルなどの宿泊施設や土産店などの民間施設がある[15]。また文学散歩(佐藤春夫詩碑、高浜虚子の句碑など)なども楽しめる。

犬吠埼灯台下遊歩道は灯台を一周する磯づたいの遊歩道で、白亜の灯台を中心に砂浜岩礁、希少な崖地植物、漁港風景を鑑賞できる。

自然公園名 水郷筑波国定公園
施設の種類 園地、道路(歩道)
所在地 銚子市犬吠埼
面積 園地0.39ha、遊歩道延長1.37km
施設 園地、公衆トイレ、遊歩道
管理 銚子市
交通 銚子電鉄「犬吠駅」下車徒歩約10分

メディア

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犬吠埼の荒磯

東映の映画のオープニング映像「荒磯に波」は、灯台南側下の岩場にて撮影されたものである。撮影地点は立入禁止であるが、灯台施設外周を周回する遊歩道より撮影された岩を、上方からではあるが安全に眺めることが出来る。

世帯数と人口

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2019年(令和元年)8月1日現在の世帯数と人口は以下の通りである[2]

町丁 世帯数 人口
犬吠埼 364世帯 655人

小・中学校の学区

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市立小・中学校に通う場合、学区は以下の通りとなる[16]

番地 小学校 中学校
全域 銚子市立高神小学校 銚子市立第二中学校

町名の変遷

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銚子市と高神村の合併後、銚子市大字高神の内、以下の小字が再編されて犬吠埼となった[17]

実施後 実施年月日 実施前
犬吠埼 1938年6月1日[18] 鵜ノ屎(一円)、酉明(天王台に編入された10,159-10,195番地[19]を除いた部分)、犬吠(一円)[20]

周辺施設

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犬吠埼灯台
犬吠埼より望む君ヶ浜
  • 犬吠埼灯台
    • 犬吠テラステラス
    • ドライブインなぎさや
    • あわび屋
  • 犬吠埼温泉
    • ホテル&スパ月美 太陽の里
      • 別邸 海と森
    • 絶景の宿 犬吠埼ホテル(黒潮の湯源泉)
    • ぎょうけい館
    • 犬吠埼観光ホテル(潮の湯温泉源泉)
    • ホテルニュー大新
  • マークガーデン犬吠埼
  • 君ヶ浜海岸
  • 君ヶ浜しおさい公園

交通

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公共交通機関

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鉄道

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高速バス

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自動車

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一般道路

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高速道路

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駐車場

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  • 犬吠埼灯台駐車場(無料)

ギャラリー

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脚注

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注釈

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  1. ^ 富士山のような高地や、離島を除く。

出典

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  1. ^ 千葉県銚子市の町丁・字一覧”. 人口統計ラボ. 2019年8月19日閲覧。
  2. ^ a b 町丁字別人口および世帯数・各年齢別人口”. 銚子市 (2019年8月8日). 2019年8月19日閲覧。
  3. ^ a b 郵便番号”. 日本郵便. 2019年8月19日閲覧。
  4. ^ 市外局番の一覧”. 総務省. 2019年8月19日閲覧。
  5. ^ a b c 銚子・犬吠埼に義経伝説?初日の出・夕陽おすすめスポットも”. ORICON NEWS. 2022年11月30日閲覧。
  6. ^ a b のぼれる灯台16 犬吠埼灯台(いぬぼうさき)(千葉県銚子市)”. 公益社団法人燈光会. 2022年11月30日閲覧。
  7. ^ 国宝・重要文化財(建造物)の指定について”. 文化庁. 2020年10月18日閲覧。
  8. ^ 令和2年12月23日文部科学省告示第140号
  9. ^ 重要文化財指定にともない、登録有形文化財の登録は抹消されている(令和2年12月23日文部科学省告示第142号)。
  10. ^ 犬吠埼灯台について”. 海上保安庁第三管区海上保安本部. 2022年11月30日閲覧。
  11. ^ 銚子市生涯学習ガイド〜犬吠埼の自然植物”. www.city.choshi.chiba.jp. 2019年2月13日閲覧。
  12. ^ 犬吠埼の自然 - 犬吠埼ブラントン会”. www.inubo.net. 2019年2月13日閲覧。
  13. ^ 観光情報 銚子市”. www.city.choshi.chiba.jp. 2019年2月13日閲覧。
  14. ^ 初日の出情報(2019年1月)”. 国立天文台(NAOJ). 2019年2月13日閲覧。
  15. ^ a b 自然環境整備計画(国定公園等整備事業)の目標、計画期間及び整備方針”. 千葉県. 2022年11月30日閲覧。
  16. ^ 銚子市立小・中学校通学区域一覧 2019年8月19日閲覧 (PDF)
  17. ^ 『続銚子市史Ⅰ 昭和前期』p.337,343 銚子市 1983
  18. ^ 『続銚子市史Ⅰ 昭和前期』p.337 銚子市 1983
  19. ^ 『続銚子市史Ⅰ 昭和前期』p.341 銚子市 1983
  20. ^ 『続銚子市史Ⅰ 昭和前期』pp.343-344 銚子市 1983

関連項目

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外部リンク

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