イッツ・オール・オーヴァー・ナウ
「イッツ・オール・オーヴァー・ナウ」(It's All Over Now)は、アメリカのR&Bグループ、ヴァレンティノスの楽曲。作詞・作曲はボビー・ウーマックおよびシャーリー・ウーマック。1964年にヴァレンティノスのシングルとしてリリースされたのが初出。同年にイギリスのロックバンド、ローリング・ストーンズによってカバーされ、彼らにとって初のナンバーワン・ヒットとなった[1]:311。
解説
[編集]ヴァレンティノスは1964年3月24日にハリウッドのユナイテッド・レコーディングでこの曲を録音し[2]、2か月後にシングルリリースした。アメリカのBillboard Hot 100には94位、同R&Bチャートには21位にランクインした[3]。作者のボビー・ウーマックは、後にこの曲をセルフカバーした(後述)。
ローリング・ストーンズのカバー
[編集]「イッツ・オール・オーヴァー・ナウ」 | ||||||||||||||||||||
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ローリング・ストーンズ の シングル | ||||||||||||||||||||
初出アルバム『12×5 (US)』 | ||||||||||||||||||||
B面 | グッド・タイムズ・バッド・タイムズ | |||||||||||||||||||
リリース | ||||||||||||||||||||
録音 | 1964年6月10日 | |||||||||||||||||||
ジャンル | ロック、R&B | |||||||||||||||||||
時間 | ||||||||||||||||||||
レーベル | デッカ | |||||||||||||||||||
作詞・作曲 | ボビー・ウーマック、シャーリー・ウーマック | |||||||||||||||||||
プロデュース | アンドリュー・ルーグ・オールダム | |||||||||||||||||||
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解説
[編集]1964年6月1日、バンド初の北米ツアーのためにニューヨークに降り立ったローリング・ストーンズは、同日にゲスト出演したラジオ番組にて、DJのマレー・ザ・Kからヴァレンティノスの「イッツ・オール・オーヴァー・ナウ」を紹介され、彼からこの曲をカバーするよう勧められた[4][5]:45。6月10日、バンドはシカゴのチェス・スタジオで行われたセッションの中で、この曲を録音した[5]:48。
「イッツ・オール・オーヴァー・ナウ」は1964年6月26日にシングルリリースされ(B面は「グッド・タイムズ・バッド・タイムズ」)、イギリスのシングルチャートでバンド初となる1位となった[6]。アメリカのBillboard Hot 100では26位まで上昇[7]、さらにバンド2枚目のスタジオ・アルバム『12×5』にも収録された。
キース・リチャーズは、リリース当時のインタビューで「俺たちのシングルの中で最高のものだと思う」と語り、ミック・ジャガーも「マレー・ザ・Kはクソ野郎だと思ってたが、奴は俺たちにいいものをくれたよ」と語っている[8]。ビル・ワイマンも「サウンドが気に入っている」と好意的な意見を述べたが、ブライアン・ジョーンズは「俺はそれほど気に入ってない。悪くはないが何だろう、何か引っかかる」とやや否定的な見方を示した[4]。
ニュー・ミュージカル・エクスプレスのロイ・カーは「この曲はカバーするのが非常に難しい。名誉のために言えば、ストーンズは全く異なる角度からアプローチしたのであり、それにより彼らは、競争相手には欠けているカリスマ的なスタイルを持っていることを明白にした」と称賛した[1]:327。一方、デイリーメールやイヴニング・スタンダードといったプレスからは「カントリーっぽい」と評された[4]。これに対しジャガーは「ちょっと田舎っぽかったかもな。でも俺たちはR&Bから離れたわけじゃない。俺たちはただ感じたままに演奏するだけさ」と反応し[1]:327、ワイマンも「(カントリーっぽく聴こえたのは)12弦ギターと和音のせいだろう。でも突然スタイルを変えたわけじゃない。俺たちのレコードはどれも違う。同じことをやりたくないのさ」と同調した[1]:328。またリチャーズは、ジョン・レノンからこの曲のギターソロを酷評され、自身も「確かにあれは俺のベストじゃない」と認めたことを自伝の中で明かしている[9]。
ストーンズのコンサートにおいては、1964年から1965年、1967年、1973年、1994年から1995年、2007年、2012年から2014年の各ツアーの中で披露されている[8]。
演奏メンバー
[編集]※出典:[8]
- ミック・ジャガー - リード&バッキングボーカル、タンブリン
- キース・リチャーズ - エレキギター(ソロ含む)、バッキングボーカル
- ブライアン・ジョーンズ - エレキギター
- ビル・ワイマン - ベース
- チャーリー・ワッツ - ドラムス
- イアン・スチュワート - ピアノ
チャート成績
[編集]チャート (1964年) | 最高位 |
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オーストラリア (Kent)[10] | 9 |
ベルギー (Ultratop 50 Flanders)[11] | 8 |
カナダ トップシングルス (RPM)[12] | 26 |
フィンランド (Soumen Virallinen)[13] | 11 |
ドイツ (GfK Entertainment charts)[14] | 14 |
アイルランド (IRMA)[15] | 2 |
オランダ (Single Top 100)[16] | 1 |
ニュージーランド (Lever Hit Parade)[17] | 2 |
ノルウェー (VG-lista)[18] | 5 |
スウェーデン (スヴァリイェトプリストン)[19] | 3 |
スウェーデン (Tio i Topp)[20] | 2 |
UK シングルス (OCC)[21] | 1 |
US Billboard Hot 100[22] | 26 |
その他のカバー
[編集]- ウェイロン・ジェニングス - アルバム『The One and Only』(1967年)収録。
- ロッド・スチュワート - アルバム『ガソリン・アレイ』(1970年)収録。
- ライ・クーダー - アルバム『パラダイス・アンド・ランチ』(1974年)収録。
- ボビー・ウーマック(feat. ビル・ウィザース) - アルバム『I Don't Know What the World Is Coming To』(1975年)収録。
- ジョニー・ウィンター - ライブアルバム『狂乱のライヴ』(1976年)収録。
- モリー・ハチェット - アルバム『Flirtin' with Disaster』(1979年)収録。
- リッキー・ネルソン - アルバム『The Memphis Sessions』(1986年)収録。
- ダーティー・ダズン・ブラス・バンド(feat. ドクター・ジョン) - アルバム『Voodoo』(1989年)収録。
- ソーシャル・ディストーション - アルバム『Social Distortion』(1990年)の日本盤にボーナストラックとして収録。
- リバース・ブラス・バンド - アルバム『The Main Event: Live at the Maple Leaf』(1999年)収録。
- ブリンズリー・シュウォーツ - アルバム『イッツ・オール・オーヴァー・ナウ』(1974年録音、2017年リリース)収録。
- トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ - ライブアルバム『Live at the Fillmore 1997』(2022年)収録。
他多数。
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ a b c d ビル・ワイマン、レイ・コールマン「ストーン・アローン/上」、ソニー・マガジンズ、1992年、ISBN 978-4401616541。
- ^ “Valentinos’ day” (英語). 2024年7月3日閲覧。
- ^ “THE VALENTINOS-LOOKIN’ FOR A LOVE-THE COMPLETE SAR RECORDINGS.” (英語). 2024年7月3日閲覧。
- ^ a b c 『ローリング・ウィズ・ザ・ストーンズ』(ビル・ワイマン/リチャード・へーヴァーズ著、立神和依/河原真紗子訳、小学館プロダクション刊、2003年、ISBN 4-7968-8007-0)137頁。
- ^ a b テリー・ロウリングス、アンドリュー・ネイル、キース・バッドマン「ローリングストーンズ/グッド・タイムズ・バッド・タイムズ」、シンコーミュージック、2000年、ISBN 978-4401616541。
- ^ IT'S ALL OVER NOW – ROLLING STONES | Official Charts
- ^ The Rolling Stones | Biography, Music & News | Billboard
- ^ a b c “It's All Over Now” (英語). .timeisonourside.com. 2024年7月3日閲覧。
- ^ 『Life:Keith Richards (English Edition)』キース・リチャーズ著、 Weidenfeld & Nicolson刊、2010年、ISBN 978-0-297-85862-1(Kindle版、位置No. 3148-3150/9615
- ^ Kent, David (2009). Australian Chart Book: Australian Chart Chronicles (1940–2008). Turramurra: Australian Chart Book. p. 205. ISBN 9780646512037
- ^ "Ultratop.be – The Rolling Stones – It's All Over Now" (in Dutch). Ultratop 50.
- ^ "Top RPM Singles: Issue 4706." RPM. Library and Archives Canada.
- ^ Nyman, Jake (2005) (フィンランド語). Suomi soi 4: Suuri suomalainen listakirja (1st ed.). Helsinki: Tammi. p. 240. ISBN 951-31-2503-3
- ^ "Musicline.de – The Rolling Stones Single-Chartverfolgung" (in German). Media Control Charts. PhonoNet GmbH.
- ^ "The Irish Charts – Search Results – It's All Over Now". Irish Singles Chart. Retrieved 2024-07-03.
- ^ "Dutchcharts.nl – The Rolling Stones – It's All Over Now" (in Dutch). Single Top 100.
- ^ “flavour of new zealand - search lever”. Flavourofnz.co.nz. 2 June 2021閲覧。
- ^ "Norwegiancharts.com – The Rolling Stones – It's All Over Now". VG-lista.
- ^ Hallberg, Eric (1993). Eric Hallberg presenterar Kvällstoppen i P 3: Sveriges radios topplista över veckans 20 mest sålda skivor 10. 7. 1962 - 19. 8. 1975. Drift Musik. pp. 243. ISBN 9163021404
- ^ Hallberg, Eric; Henningsson, Ulf (1998). Eric Hallberg, Ulf Henningsson presenterar Tio i topp med de utslagna på försök: 1961 - 74. Premium Publishing. pp. 313. ISBN 919727125X
- ^ "Official Singles Chart Top 100". UK Singles Chart. 2024年7月3日閲覧。
- ^ "Rolling Stones Chart History (Hot 100)". Billboard. 2024年7月3日閲覧。